【稽古場レポート】深作健太演出《ローエングリン》

 東京二期会が2月21日からワーグナーの《ローエングリン》を上演する。演出は深作健太、指揮は準・メルクル。2015年、深作がオペラを初演出することで話題となった《ダナエの愛》でのコンビ、再来だ。
 本公演を前に、福井敬、林正子組の稽古を取材した。ここでは第3幕の稽古の様子をご紹介する。
(2018.2.5 都内稽古場 Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

 《ダナエの愛》で大胆な演出を施した深作のオペラ演出第2弾とあって、《ローエングリン》での演出に注目が集まる。深作の狙いを一言で表すと「ローエングリンにルートヴィヒ2世を重ねあわせた物語」だ。
 その意味を考える前に、まずは、そもそもの《ローエングリン》のあらすじを振り返っておきたい。

〜あらすじ〜
 先代領主の亡き後、ブラバント公国を統治するため赴いたドイツ国王ハインリヒは、先代領主の遺児ゴットフリート殺害の疑いが姉エルザにあるとのテルラムントからの訴えを受ける。エルザは釈明せず、「夢に見た騎士が自分を救い出してくれる」と語る。
 神明裁判となり、エルザが祈りを捧げると夢に見た“白鳥の騎士”が現れる。騎士はエルザに「決して自分の名前や正体を尋ねてはならない」という約束をさせ、テルラムントとの闘いに勝利した際はエルザを妻にし、ブラバントを治めると宣言する。勝利した騎士は、テルラムントを追放し、2人は祝福を受ける。
 しかし、追放されたテルラムントの妻オルトルートは、言葉巧みにエルザに取り入り、素性のわからない騎士への疑念の心を焚きつけていく。
 2人の婚礼の日、エルザの不安は頂点に達し、ついに“禁断の問い”を発してしまう。騎士はハインリッヒの前で「私は、モンサルヴァート城で聖杯を守る王パルツィヴァルの息子ローエングリンだ」と名乗り、去る。騎士を運んでいた白鳥は行方知れずだったゴットフリートの姿へと変わっていた・・・


 深作は「いま日本人が《ローエングリン》をやる意味」は何かと自問しつつ、今回の演出に際し、次のように語る。

 「《ローエングリン》は、10世紀のアントワープを舞台にした史劇のリアリズムのなかに突如メルヘンが入ってくるオペラ。現実とメルヘンの対比、現実と虚構、戦争と平和、男と女、昼と夜のコントラストがある。けれども、どちらか一面だけになってはだめ。
 抽象的な演出をすればするほど、ローエングリンに偏ってしまうけれども、じゃあいったいローエングリンはどこからきたのか?という疑問がわいてくる。
 今回の演出では、歴史劇の側面を重視したい。歴史劇というリアリズムがあるからこそ虚構(メルヘン)が生きてくる。
 作曲当時のワーグナーにとって、現実問題として19世紀末のドイツの状況が脳裏にあっただろう。ワーグナー自身、ドレスデン革命でザクセンから追放され、北の強国プロイセンが勝ち、ドイツが統一される・・・そうやって台本を読むと、最初に出てくる国王ハインリッヒの意味合いがわかってくる。
 一方、《ローエングリン》を愛した人物が2人いる。ヒトラーと、狂王と呼ばれたバイエルン国王ルートヴィヒ2世(1845-1886)。ヒトラーがこのオペラを愛し、ナチスによって政治利用されてしまった。チャップリンの映画『独裁者』では《ローエングリン》が流れるし、コッポラの映画『地獄の黙示録』などによってワーグナーのイメージが曲解されてしまっている。本作の真意を取り戻したい。
 もうひとり、ルートヴィヒ2世。ヴィスコンティの映画『ルートヴィヒ』などでも題材となっているルートヴィヒの視点で演出できないかと考えた。
 舞台は1884年。いまだ建設中のノイシュバンシュタイン城(ルートヴィヒの晩年)。ルートヴィヒは、現実と虚構の区別がつかず狂王と呼ばれていた。ルートヴィヒが《ローエングリン》の譜面をくりながら自分の人生を振り返ると、次第にローエングリンの物語へと重なっていき、ローエングリンとルートヴィヒの物語が同時進行する」

 細かい演出プランについては別項でご紹介するが、こちらでは、稽古場の様子をみつつ第3幕の演出について少しだけご紹介する。

ローエングリンとの婚礼を前にしたエルザ(林正子)。部屋にはルートヴィヒ2世の肖像画が掲げられている

ようやく二人きりになれたローエングリン(福井敬)とエルザ


部屋には《ローエングリン》のスコアが置かれている。
ここにもローエングリンとルートヴィヒ2世の関係をひもとく手がかりがある


ゴットフリート=白鳥(ローエングリン)を示唆させる子役
ちなみに、今回の演出では、第1幕から三世代にわたるローエングリンが登場する
(福井敬、黙役の丸山敦史(青年時代)および、子役)。

ハインリッヒ(小鉄和広)

テルラムント(大沼 徹)
台本では第3幕冒頭でローエングリンの刃にあい死ぬ設定になっているが、本演出では違う解釈となっている

エルザからの“禁断の問い”に悩むローエングリン

ついには、自らの名を「ローエングリン」と明かしてしまう。
後ろに立つのが、黙役の丸山敦史


オルトルート(中村真紀)
ヴォータンを崇拝するオルトルートは、ヴォータンと同じ、片目で槍を持っている

ゴットフリートの演技をつける深作健太





【公演情報】
東京二期会オペラ劇場
リヒャルト・ワーグナー《ローエングリン》
(オペラ全3幕 日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演)

2018.2/21(水) 18:00、22(木)・24(土)・25(日)14:00
東京文化会館 大ホール

指揮:準・メルクル
演出:深作健太

●キャスト
2月21日(水)・24日(土)/2月22日(木)・25日(日)
ハインリヒ・デア・フォーグラー:小鉄和広/金子 宏
ローエングリン:福井 敬/小原啓楼
エルザ・フォン・ブラバント:林 正子/木下美穂子
フリードリヒ・フォン・テルラムント:大沼 徹/小森輝彦
オルトルート:中村真紀/清水華澄
王の伝令:友清 崇/加賀清孝
4人のブラバントの貴族
 吉田 連/菅野 敦
 鹿野浩史/櫻井 淳
 勝村大城/湯澤直幹
 清水宏樹/金子慧一
ローエングリン(青年時代):丸山敦史(全日)

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京都交響楽団


●入場料金(税込)

◆[2月21日(水)・24日(土)・25日(日)公演]
一般:S席 17,000 A席¥14,000 B席¥11,000 C席¥8,000 D席 ¥5,000 E席¥完売 学生席¥2000
愛好会会員:S席 ¥16,000 A席¥13,000 B席¥10,000 C席¥8,000 D席¥5,000 E席¥完売

◆[2月22日(木)公演]平日マチネ・スペシャル料金
一般:S席 ¥15,000 A席 ¥12,000 B席¥10,000 C席 ¥8,000 D席 ¥完売 E席 ¥完売 学生席¥2,000
愛好会会員:S席 ¥14,000 A席 ¥11,000 B席 ¥9,000 C席 ¥8,000 D席 ¥完売 E席 ¥完売

※チケットお申込みと同時に愛好会へもご入会いただけます。
※チケット購入後のお取消、日程の変更はできません。
※二期会オペラ愛好会の特典は二期会チケットセンターでチケットをご購入された場合に限り適用されます。
※E席は二期会チケットセンターでは取扱いいたしません。チケットスペース(TEL03-3234-9999)他、前売りプレイガイドにてお求め下さい。
※学生席のご予約は二期会チケットセンター電話のみのお取扱いです。
※未就学児の入場はお断りします。

●ご予約・お問合せ
チケットスペース:03-3234-9999
二期会チケットセンター:03-3796-1831
(平日10:00〜18:00/土曜10:00〜15:00/日・祝休業)
http://www.nikikai.net/ticket/