ヤマハ銀座ビルの上階、「アコースティック楽器に最適なコンサートホール」と親しまれているヤマハホール。高品質な木材による美しい内装と豊かな音響をもち、出演者は国内外の一流アーティストばかり。それをわずか333席と限られた空間で味わえる贅沢さも、同ホールの特徴となっている。
そのヤマハホールがリニューアルオープンしたのは2010年2月で、来たる20年には10周年という記念の節目を迎える。このたび発表されたのは、20年1月から3月まで行われる記念シリーズ公演で、同ホールならではの名演奏家たちによる好企画が並んでいる。
10周年のお祝いの幕開けとなる1月13日の公演は、日本を代表的する名ピアニストの仲道郁代と、ウィーン・フィルの名コンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデによる名曲コンサート。仲道の得意とするベートーヴェンとシューマンの、ピアノ曲とヴァイオリン・ソナタという演目。シュトイデはソリストとしても世界的な名手であり、贅沢なデュオを体験できるはず。
1月24日から1月26日には、「Acoustic Guitar Festival」が予定されている。3日間にわたり、ヤマハホールをはじめとして、ヤマハ銀座ビル全体の複数の会場を使い、アコースティックギターの魅力をたっぷり聴かせる祭典となる。出演者は、現在発表されているだけでも、伊藤ゴロー、大萩康司、沖仁、小沼ようすけ、荘村清志、渡辺香津美と豪華な名前が挙がっていて、国内屈指のギター・フェスになるに違いない。
2月は期待の新星とベテランによる公演が並ぶ。
まず19日、メゾソプラノの脇園彩が、ヤマハホールに初登場する。新星とはいっても、すでにイタリアの多くの名門歌劇場や音楽祭の舞台に立っていて、しかも主役級の役柄での出演も多く、世界が注目する若きスターといって差し支えないだろう。待望のリサイタルは、イタリア人の共演者とともに、得意のロッシーニなど、本物のイタリアの香りを届ける。
一方、22日は同ホールおなじみの「徳永二男、堤剛、練木繁夫による珠玉のピアノトリオ・コンサート」の第6弾。 日本のクラシック音楽界を代表する大ベテランかつ人気奏者によるトリオは、毎年すぐに完売してしまう人気公演。演目はハイドン、ベートーヴェン、ブラームスの名作で、やはり完売必至だ。
続いて26日には、世界のトップジャズピアニスト・小曽根真が登場する。このインティメートな空間で、記念イヤーにふさわしい、世界最先端の名人による興奮のステージを堪能したい。
3月は日本の期待の名手たちによる公演が目白押し。
7日は若手サクソフォン奏者の第一人者と目される上野耕平が、ピアニスト・山中惇史、パーカッショニスト・石若駿とのトリオ編成でステージに立つ。ジャンルや編成にとらわれず、快進撃を続ける上野たちの音色を楽しみたい。
11日は「ロシアン・ブラス・ナイト!」と銘打ち、N響首席トランペット奏者の菊本和昭が、N響はじめ国内オーケストラ等で活躍する仲間たちとともに、壮麗な金管の響きで祝祭公演を盛り上げる。とくに大曲「展覧会の絵」の編曲は楽しみ。オールロシア・プログラムで、ホールが輝かしい音に満たされる。
14日は日本の代表的なフラメンコギター奏者、沖仁によるフラメンコの夕べを。詳細は今秋発表予定だが、ヤマハホールが濃密なフラメンコの空気に包まれる、稀有な機会となるだろう。
16日には、国内屈指のチェリスト宮田大と、やはり国内トップの四重奏団への道をひた走るウェールズ弦楽四重奏団という、若手の名手たちが集う。宮田のバッハ無伴奏に、ウェールズが加わってのシューベルトの弦楽五重奏曲、いずれも彼らの最高の聴きものといえる演目で、話題になること間違いなし。
「ロマンティックな夕暮れ」と題された、21日の公演。都響首席オーボエ奏者の広田智之とギターの大萩康司、ふたりの名手が、名旋律の数々を奏で、最高の癒しの時間を提供する。 木に包まれる空間でのオーボエとギターの音色は、心地よく美しく響きわたるはず。
24日には、日本を代表するマリンバ奏者のひとり神谷百子が、信頼するパーカッション奏者たちとともに、豪勢なマリンバ・リサイタルを開催する。ヤマハホールはマリンバとの相性も絶妙。神谷のソロのほか、4台のマリンバによるアンサンブルなどで、楽器の醍醐味を心ゆくまで体感したい。
また、同じビルの地下2階にあるヤマハ銀座スタジオでも、10周年記念シリーズ公演が行われる。ライヴコンサートや講演会に適した空間で、幅広いイベントが開催されている会場であり、本シリーズでもユニークな公演が並ぶ。「小泉八雲の世界 Vol.13」(2/7)は、佐野史郎が朗読・脚本で出演する、音楽と講演による一夜。「AKIRA’S Special Live Vol.5」(2/22)、「タイガー大越 トランペットの絵画 Vol.6」(3/20)では、違うタイプのライヴが楽しめるはず。上階のホールはもちろん、地下のスタジオの方も注目してみたい。文:林 昌英
ヤマハホール/ヤマハ銀座スタジオ 10周年記念シリーズ
https://www.yamaha.com/ja/news_release/2019/19073102/
ヤマハホール
https://www.yamahaginza.com/hall/
ヤマハ銀座スタジオ
https://www.yamahaginza.com/studio/