伊藤亮太郎(ヴァイオリン)

C)M.Sato

 NHK交響楽団のコンサートマスターとして活躍する伊藤亮太郎は、20年以上にわたって「ストリング・クヮルテットARCO」の第1ヴァイオリン奏者を務める、熱い“室内楽愛”の持ち主でもある。この6月、5人の仲間たちとともに、一期一会の弦楽アンサンブルを聴かせる。出演者は伊藤のほか、横溝耕一(ヴァイオリン)、柳瀬省太、大島亮(以上ヴィオラ)、横坂源、辻本玲(以上チェロ)という名手揃いだ。

「柳瀬さんは二十数年の付き合いで本当に気心知れた仲間。2歳上の彼はARCOの精神的支柱でもあります。ほかはみんな若い人たち。いま若手がすごいですよね。横溝さんはN響の仲間でもありますけど、彼らの世代の一番手であるウェールズ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者。何でもできてしまうオールラウンド・プレイヤーで、一緒に室内楽を弾くのは初めてなので楽しみにしています。神奈川フィルの首席の大島さんは、室内楽の演奏会で頻繁に顔を見る、若手の筆頭ですよね。横坂さんは、すごく歌心がある。もちろんソリストとしても素晴らしいですけど、室内楽もいろんな方とやっていらっしゃる。辻本さんは、僕は初めて共演するのですけれど、佐世保のクァルテットで彼と一緒に活動している柳瀬さんから『辻本玲さんはすごいよ』と推薦してくれました。彼もあちこちの演奏会で引っ張りだこですよね」

 プログラムは、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番をメインに、ドホナーニの弦楽三重奏曲「セレナード」、ドヴォルザークの弦楽五重奏曲第3番という構成。

「まず、どうしてもブラームスをやりたいと考えました。柳瀬さんがいますから、ヴィオラが活躍する曲を、と。“ザ・名曲”みたいな作品ですよね。有名な第2楽章だけでなく、全楽章、どの一音たりとも省いたり付け足したりできないぐらい完成度が高い。前半のドホナーニとドヴォルザークは、ブラームスに影響を受けた作曲家という意味でつながっていますし、ヴィルトゥオーゾ的な要素も強くて、一人ひとりのソリスティックな魅力が際立つ作品だと思います」

 指揮者のいない室内楽の魅力は、その自由度にあるという。しかもこれらの編成は、ストイックで緊密な弦楽四重奏に比べて、より個が出ていいのだと語る。

「こういう弦楽アンサンブルは、協調性よりも、自発性が大事かもしれません。すごいメンバーが集まってくれたので、彼らの個人技、個性を楽しんでいただければと思います」

 「室内楽に理想的なサイズ」だと語る333席のヤマハホールで、その妙技を堪能しよう!
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2018年6月号より)

伊藤亮太郎と名手たちによる弦楽アンサンブルの夕べ
〜弦と弓が紡ぐ馥郁たる響き〜
2018.6/8(金)19:00 ヤマハホール
問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171 
http://www.yamahaginza.com/hall/