開幕直前!スーパーオペラ 歌劇《紅天女》ゲネプロ・レポート

「命」と「愛」というテーマをオペラで表現

 スーパーオペラ《紅天女》がいよいよその全貌を現す。昨年、美内すずえ作の大ヒット漫画『ガラスの仮面』の作中劇である『紅天女』オペラ化のニュースがもたらされてから、『ガラ面』ファン、漫画ファン、そしてオペラファンが心待ちにしていたこの日が、ようやくやってきた。公演は1月11日から15日までの5日間、渋谷のBunkamuraオーチャドホールで行われる。本番の前に行われた小林沙羅が紅天女/阿古夜を演じる組の最終総稽古(ゲネラルプローベ)の様子をレポートする。
(2020.1/9 Bunkamura オーチャードホール 取材・文:室田尚子 Photo:Lasp Inc.) 

『紅天女』の持つ大きなテーマは、「命」とは何か、どこからどのように生み出されているのか、ということだ。舞台は、南北朝に分かれて人々が争っている室町時代。戦火の中で「もう死を待つしかない」と人々が歌う第1幕の冒頭場面を観て、あまりにも現在の世界情勢とリンクしてしまうことにまず鳥肌がたった。「命」がどこから来るのかを問うことは、そのまま、「命」を粗末に扱う人間の愚かさへの異議申し立てなのだ。

 第1幕で、千年の梅の木に宿る精霊・紅姫が「人はなぜ争い合うのか…天の声が聞こえぬか、地の声が聞こえぬか、天と地を結び、命の玉を育てゆく、神の歌が聞こえぬか」という漫画でおなじみのセリフを歌うシーンがたいへん印象的だ。腕を大きく振りかぶるような独特の動きが、舞台の背後に映し出された太極図の映像とともに、自然や神という「目に見えぬものの存在」を強く印象づける。

 仏師・一真(山本康寛)は、帝から戦乱の世を鎮めるために天女像を彫るようにと命を受け、そのために千年の梅の木を探しているうちに、あやまって谷底へ落ちてしまう。記憶を失った一真は、そこで不思議な娘・阿古夜(小林沙羅)と出会い恋に落ちる。阿古夜は病や怪我に効く薬草集めの名人であるばかりでなく、木や鳥や水や空とも意志を通じることができる。阿古夜こそが梅の木の精霊が乗り移った存在=紅姫の「依り代」なのだ。しかし、阿古夜は一真に恋をすることで、次第にその力を失っていく。南北朝の争いは激化し、地が人の血で汚されていくことを怒った紅姫は、人間を滅ぼしてしまおうと考えるのだが…。

 まだ漫画でも描かれていない『紅天女』の結末は、「お話」としては意外だが、「あ、そういうことか!」と深く納得させられるものだった。わかりにくい言い方で申し訳ないが、ぜひ、皆さん自身の目で、耳で確かめていただきたい。人が生きていく上でいちばん大切なのは愛、それも生きとし生けるすべてのものへの愛なのだというメッセージを受け取った、とだけ言っておこう。

 小林沙羅は、阿古夜の時には声をまろやかに出す一方、紅天女を演じる際には、鋭く威厳のある声で精霊の怒りを全面に押し出していく。一方の山本康寛は、自らの使命に目覚め生きていく人間の強さと善良さを感じた。全体的に寺嶋民哉の音楽は映画やミュージカルを彷彿とさせ、オペラ初心者にも馴染みやすいのではないか。一人でも多くの人に、名作『紅天女』がオペラの舞台として出現する瞬間を目撃してほしい。

【第1幕】

左より:三浦克次(長老)、小林沙羅(紅天女)、松原広美(お豊)

山本康寛(仏師・一真)

【第2幕】

左より:斎木智弥(楠木正勝)、岡 昭宏(楠木正儀)、小林沙羅(阿古夜)


左より:三浦克次(長老)、照屋篤紀(クズマ)、小林沙羅、飯嶋幸子(こだま)、古澤真紀子(しじま)

【第3幕】




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Information
日本オペラ協会公演 日本オペラシリーズNo.80
スーパーオペラ 歌劇《紅天女》(全3幕・新作初演)

2020.1/11(土)、1/12(日)、1/13(月・祝)、1/14(火)、1/15(水)各日14:00
Bunkamura オーチャードホール

原作・脚本・監修:美内すずえ 作曲:寺嶋民哉
演出:馬場紀雄 特別演出振付:梅若実玄祥
指揮:園田隆一郎 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 合唱:日本オペラ協会
石笛:横澤和也 二十五弦箏:中井智弥

配役
阿古夜 × 紅天女:小林沙羅(1/11,1/13,1/15) 笠松はる(1/12,1/14)
仏師・一真:山本康寛(1/11,1/13,1/15) 海道弘昭(1/12,1/14)
帝:杉尾真吾(1/11,1/13,1/15) 山田大智(1/12,1/14)
伊賀の局:丹呉由利子(1/11,1/13,1/15) 長島由佳(1/12,1/14)
楠木正儀:岡 昭宏(1/11,1/13,1/15) 金沢 平(1/12,1/14)
藤原照房:渡辺 康(1/11,1/13,1/15) 前川健生(1/12,1/14)
長老:三浦克次(1/11,1/13,1/15) 中村 靖(1/12,1/14) 他

問:日本オペラ振興会チケットセンター03-6721-0874
https://www.jof.or.jp 
https://www.jof.or.jp/performance/2001_kurenai