オペラはもちろんのこと、第九や宗教曲のソリスト、歌曲コンサートと、今、あちこちの音楽シーンでもっとも頻繁に出会うメゾソプラノの一人が林美智子である。作詞も手掛け、みずからオペラのプロデュースまでやってのける。日本歌曲のレパートリーも広い。ことに、武満徹に関しては、2008年のセカンド・アルバム「地球はマルイぜ〜武満徹:SONGS〜」に武満の手がけた歌曲全曲を録音して『レコード芸術』誌の特選盤に輝いた実績がある。柔らかくて深みのある林ヴォイスは、日本語の美しい響きをさらにチャーミングに伝える。
今回、彼女が組むのは、今大躍進中のテノール、与儀巧。モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》のフェランド、ドニゼッティ《愛の妙薬》のネモリーノ、ヴェルディ《椿姫》のアルフレードなどでおなじみの彼は、近年、びわ湖ホール制作のワーグナー《ラインの黄金》のミーメや、新国立劇場制作のヴェルディ《オテロ》のカッシオへと芸域を広げ、いずれも高い評価を得ている。このような第一線のオペラ歌手二人が共演する日本歌曲コンサートはめったに聴けない貴重な機会といえるだろう。ピアノは河原忠之。
山田耕筰から武満徹、木下牧子まで20曲あまり、懐かしい歌、胸を打つ歌、悲しい物語の秘められた歌、生きる力が湧いてくる歌、二人の名唱を堪能したい。
文:萩谷由喜子
*本公演は、新型コロナウイルス感染症対策本部による基本方針発表を受け、無観客ライブ・ストリーミング配信(無料)のみでの開催となりました(3/15主催者発表)。
下記リンクよりご覧ください。
https://gate2.primeseat.net/spf/2020031401/
【公演情報】
林 美智子(メゾ・ソプラノ)& 与儀 巧(テノール)
にほんの歌を集めて
2020.3/14(土)15:00 旧東京音楽学校奏楽堂
●出演
メゾ・ソプラノ:林 美智子
テノール:与儀 巧
ピアノ:河原忠之
●曲目 曲目解説(PDF)
小さな空:武満徹・作詞作曲(野平一郎・編曲)
鐘が鳴ります:北原白秋・作詞/山田耕筰 ・作曲
早春賦:吉丸一昌・作詞/中田 章・作曲
城ヶ島の雨:北原白秋・作詞/梁田 貞・作曲
お菓子と娘:西條八十・作詞/橋本国彦・作曲
くちなし:高野喜久雄・作詞/高田三郎・作曲
貝がらのうた:三善 晃・作詞作曲
鉾をおさめて:時雨音羽・作詞/中山晋平・作曲
九十九里浜:北見志保子・作詞/平井康三郎・作曲
桜横ちょう:加藤周一・作詞/別宮貞雄・作曲
○と△のうた:武満 徹・作詞作曲(野平多美・編曲)
死んだ男の残したものは:谷川俊太郎・作詞/武満 徹・作曲
翼:武満 徹・作詞作曲(野平多美・編曲)
花:喜納昌吉・作詞作曲
えんどうの花:金城栄治・作詞/宮良長包・作曲(中村 透・編曲)
さとうきび畑:寺島尚彦・作詞作曲
芭蕉布:吉川安一・作詞/普久原恒勇・作曲
旅のこころ:高田敏子・作詞/加藤昌則・作曲
夕方の三十分:黒田三郎・作詞/加藤昌則・作曲
さびしいカシの木:やなせたかし・作詞/木下牧子・作曲
夢みたものは:立原道造・作詞/木下牧子・作曲
●無観客ライブ・ストリーミング配信
視聴リンク
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