クレメンス・ハーゲン(チェロ)& 河村尚子(ピアノ) ベートーヴェン チェロとピアノのための作品 全曲演奏会 II

 クレメンス・ハーゲンと河村尚子のデュオ・チクルス第2夜は、ベートーヴェンがチェロとピアノのために書いた変奏曲とソナタの、それぞれ最後の作品が組まれている。それだけでなく、ハ長調とニ長調をとるop.102の2作は、弦楽器とピアノのための最後のソナタともなり、偉才の対照的な独創性を示す傑作である。そこに、初期ベートーヴェンが書いた長大な冒頭楽章をもつト短調ソナタ op.5-2がはさまれるが、これは18世紀末にベルリンで作曲されたチェロのための初作のひとつ。つまり、ベートーヴェンの人生の20年近い歳月を凝縮した旅でもある。

 クレメンス・ハーゲンと共演する機会があったら、なにがあっても逃してはいけない——と言い聞かされてきたのだと、河村尚子は当初から語っていた。ふたりが初めての共演の機会をもったのは2013年。このときラフマニノフとともに演奏されたのが、他ならぬベートーヴェンの第1番ヘ長調 op.5-1と第5番ニ長調 op.102-2という両端をなすソナタだった。さらに17年には、第2番ト短調 op.5-2への取り組みも聴かせた。

 近年はベートーヴェンのソロ・ソナタへの探求にも集中したピアニスト、そしてハーゲン四重奏団を通じてもベートーヴェン後期の世界に親しむチェリストが再会して、作曲家の記念年にどのような深化と自由を聴かせるのか、いよいよ期待されるところだ。
文:青澤隆明

*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、海外からの渡航制限拡大により、予定していた出演者の来日がかなわなくなったため、本公演は中止となりました。(3/24主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.tokyo-harusai.com/news_jp/20200318/


【公演情報】
クレメンス・ハーゲン(チェロ)&河村尚子(ピアノ)
ベートーヴェン チェロとピアノのための作品 全曲演奏会 II

2020.4/10(金)19:00 東京文化会館 小ホール

●出演
チェロ:クレメンス・ハーゲン
ピアノ:河村尚子

●曲目
ベートーヴェン:
 モーツァルトの歌劇《魔笛》より「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46
 チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 op.5-2
 チェロ・ソナタ 第4番 ハ長調 op.102-1
 チェロ・ソナタ 第5番 ニ長調 op.102-2