J.S.バッハの残した作品群の中で、リュートという楽器の占める割合はかなり少ない。しかし、バッハと同時代に生き、ドレスデンで活躍していたリュート奏者ヴァイスとバッハは親交を結んでいた。バッハはリュートという楽器の可能性を深く知っていた訳だ。そして現代では、バッハのリュート作品はギター用に編曲され、ギタリストたちにとってバッハの精神に触れる大事な作品として愛されている。
2020年にデビュー20周年を迎えるギタリスト・大萩康司は、そのバッハのリュート作品の中から主要な3曲を演奏する。「前奏曲、フーガとアレグロ BWV998」は1735年頃の作曲で、バッハの畢生の大作「フーガの技法」に繋がる作品として注目される。「リュート組曲 第3番 ト短調 BWV995」は「無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調」の編曲であり、「リュート組曲 第4番 ホ長調 BWV1006a」は「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ短調」の編曲である。ヴァイオリン、チェロからリュートへ、そしてリュートからギターへと、その姿を変えながらも、バッハの作品に息づく精神は変わらない。そのバッハの世界を、大萩のギターが生き生きと描き出してくれるだろう。
文:片桐卓也
【公演情報】
ミュージアム・コンサート
東博でバッハ vol.50 大萩康司(ギター)
2020.4/8(水)19:00
東京国立博物館 法隆寺宝物館エントランスホール
●出演
ギター:大萩康司
●曲目
J.S.バッハ:
前奏曲、フーガとアレグロ 変ホ長調 BWV998
リュート組曲 第4番 ホ長調 BWV1006a
リュート組曲 第3番 ト短調 BWV995
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ