イゴール・レヴィット (ピアノ)I 〜THE VARIATIONS

 1987年ロシアに生まれ、8歳でドイツに移住したイゴール・レヴィットは、演奏のたびにセンセーションを巻き起こしている逸材だ。ドイツの新聞は、「聴き手を魅了する完璧なテクニック」「今世紀最大のピアニストになり得る才能」と賞賛を惜しまない。来日公演でもピアノ好きをうならせる圧倒的なピアニズムを披露し、すでに根強いファンを獲得している。

C)Robbie-Lawrence

 今回レヴィットが披露するのは得意とするJ.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」。演奏は作曲家の魂に肉薄していく厳格さと確固たる信念に貫かれたもの。楽譜を深く読み込み、作品が生まれた時代を考察し、各曲に新たな生命を吹き込む。和声、対位法、主題の表現、ポリフォニー様式、舞曲の要素、アーティキュレーションなどに創意工夫が凝らされ、作品全体を俯瞰しながら新機軸を打ち立てていく。

 静謐な空気でスタートし、輝きと熱気に満ち、やがて疾走するようなトリルや装飾音、個性的なオクターヴの使用などが現れ、一瞬たりとも気が抜けない。まさに新時代のバッハを印象付ける「ゴルトベルク変奏曲」で、変奏の妙が堪能できる。急速なテンポ、躍動するリズム、嵐のような強音、主題の変遷などが斬新で、聴き手の心をとりこにする。
 「ゴルトベルク変奏曲」は、冒頭のアリアから変奏を経て最後のアリアに至るまでを人生という旅に例えるピアニストが多い。レヴィットの演奏もしかり。終曲を迎えると、また最初に戻るような輪廻転生の意味も示唆している。
文:伊熊よし子


【公演情報】

イゴール・レヴィット (ピアノ)I
〜THE VARIATIONS

2019.4/11(木)19:00 東京文化会館 小ホール

●出演
ピアノ:イゴール・レヴィット

●曲目
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988

●チケット料金(税込)
S:¥6,200 A:¥4,600
U-25 ※¥1,500
※ U-25チケットは、2019年2月8日(金)12:00発売開始(公式サイトのみでの取扱い)