江戸から続く行楽地・上野。東京・春・音楽祭に出かけるなら、いつもと違う散歩道を歩いてみては?
こちらでは、地下鉄・東京メトロ根津駅から東京春祭の会場までのお薦めルートをご紹介!
根津〜上野ルート、第1回目は根津神社から・・・
①根津神社
東京メトロ千代田線根津駅の1番出口を出て左に進み、餅屋、八百屋、郵便局、交番を過ぎたら、次の信号を左に曲がる。昔ながらの飴屋などに立ち寄りながら歩いていくと、右側に根津神社の赤い大きな鳥居が見えてくる。広い境内では、地域の人々や街歩きに訪れた人々が、参詣はもちろんのこと、天気が良ければベンチに腰かけてのんびりしたり、神橋から鯉や亀を眺めたり、思い思いに過ごしている。
日本武尊がはじめ千駄木に建てたと伝えられる社がこの地に移ったのは、五代将軍徳川綱吉の時代。宝永3年(1706年)に完成した権現造の社殿は、唐門や西門、透塀、楼門とあわせて国の重要文化財に指定されている。
左手に広がるつつじ苑には、4月中旬から下旬にかけて赤や白や黄のつつじが一面に咲き、その眺めは実に壮観である。音楽祭終了後にもぜひ足を運んでほしい。ずらりと立ち並ぶ小さな鳥居をくぐって行くと、奥には乙女稲荷がある。
■根津神社(ねづじんじゃ)
〒113-0031東京都文京区根津1-28-9
TEL 03-3822-0753
http://www.nedujinja.or.jp/
②よし房 凛
根津神社の表参道門から左に出て不忍通りの交差点を渡ったところに、江戸情緒漂う手打そばの店「よし房 凛」がある。黒い殻のついた丸いままの玄そばを農家からじかに仕入れ、店内右奥にある石臼で挽き、日々手打ちする。殻のまま挽いたのが噛みごたえのある田舎そば、殻を取って挽いたのがのどごしの良いせいろそば。玄そばの仕入れ先も季節に合わせて変えている。早めに訪問すると、運が良ければそばを打つ様子を見ることができるかもしれない。
お昼におすすめなのは、具だくさんのなす汁せいろ(1,350円)や天せいろ(1,700円)、ぶっかけのごぼう天そば(1,100円)。夜には、そばさしみ(600円)をはじめとするそばを使った料理や、注文が出てから揚げる手作りがんもどき(750円)など、他ではなかなか味わえない逸品が並び、つい日本酒が欲しくなる。
落ち着いた調度やかわいらしい小物など隅々まで行き届いた店内で、のんびりとそばをいただきながら春夏秋冬の江戸文化を感じられる名店である。
■よし房 凛(よしぼう りん)
〒113-0031 文京区根津2-36-1
TEL 03-3823-8454
営業時間
月、水~土:11:00~15:00(14:30LO)、17:30~21:00(20:30LO)
日:11:00~15:00(14:30LO)
定休日:火曜日
席数:16席
③芋甚
「よし房 凛」がある角の、不忍通りと直角に交わる2車線の通りは、藍染大通という。かつて近くに藍染川が流れていたことから、明治のはじめにこの一帯は藍染町と名がついた。藍染川の跡のくねくねと曲がりくねった道は、今ではへび道と呼ばれている。
不忍通りを背に藍染大通りを進むと、すぐ右手に「甘味処 芋甚」の看板と暖簾が見える。「芋」の字が屋号にあるのは、大正時代にこの地で店を始めた初代が焼き芋屋だったため。関東大震災を機にミルクホールと呼ばれる喫茶店へと変わって行き、昭和に入ったころにこの辺りでは珍しく手作りアイスクリームが売られるようになった。店内に飾られる2枚の絵からは、今の建物に建て替えられる前の、長屋の一角だったころの店の様子がうかがえる。
散歩をしながらアイスモナカ(120円~)や、小麦粉の生地で餡を包んだ焼き立ての昭和焼き(120円、4月上旬まで)をほおばるのも良いし、店内で一休みするなら、バニラと小倉のアイスクリームが仲良く並んだアベックアイス(280円)やクリームあんみつ(480円)がおすすめ。4種類のミルクを合わせて作られるというアイスクリームは、ことのほか柔らかい。黒蜜も餡もすべて手作りでお店の味が守られ、老若男女問わず愛され続けている。
■芋甚(いもじん)
〒113-0031 文京区根津2-30-4
TEL 03-3821-5530
営業時間:火~日 11:00~19:00
定休日:月曜日
席数:18席
④三浦坂~ヒマラヤ杉
「芋甚」の脇の細道を進み、雑貨屋の角を左に曲がって行くと、細く急な登り坂に突き当たる。美作国(現岡山県北部)の藩主三浦氏の屋敷がここにあったことにちなんで、三浦坂と呼ばれる。大きな通りからそれほど離れているわけではないのに、この坂まで来ると急に辺りが静かになる。
三浦坂を登りきって右に進むと、物語に出てきそうな一本の大木が姿を現す。ヒマラヤ杉だ。ごつごつとした木の肌に触れると、地域の人々に守られてきた長い年月をさかのぼって、タイムスリップできるような気さえしてくる。ヒマラヤ杉を挟んで道は二手に分かれるが、上野方面へ行くには、気の向くまま好きな方に進んで良い。どちらからでも、寺と寺の間を通りながら言問通りに出られる。
⑤市田邸
言問通りを越えて一本入ったところにも、地域の人々に守られている古民家がある。日本橋で布問屋を営む初代市田善兵衛が明治40年に建てた、市田邸である。築100年を超え、国登録有形文化財建造物に登録されている。
地域や東京芸術大学の有志を中心と発足したNPO法人たいとう歴史都市研究会によって、平成13年に借り受けられた。以来丁寧に管理されながら、庭に面した1階のお座敷は、お茶会や餅つきなどの季節に合わせた行事や、展示やコンサートなどの文化活動の場として活用されている。江戸時代から続くこの一帯の寺町・お屋敷町の風情を今に伝えるだけでなく、人と人とをつなぐ貴重な場所でもある。普段は公開されていないが、イベントに合わせて訪れてみてはどうだろうか。イベント情報は下記ウェブサイトに掲載されている。
〒110-0002 台東区上野桜木1-6-2
HP http://taireki.com/ (NPO法人たいとう歴史都市研究会)