10月28日、東京文化会館にて、「東京・春・音楽祭2020」の概要発表記者会見が開かれた。16回目の開催となる今回は3月13日から4月18日までの5週間強にわたって、オペラ、オーケストラ、室内楽など、200を超える公演が開催される。
(2019.10/28 東京文化会館 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
音楽祭の開幕を飾るのは、リッカルド・ムーティ指揮東京春祭特別オーケストラによるヴェルディの《マクベス》(演奏会形式)。前回に引き続き、巨匠ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー」も開催される。本公演2公演とは別に、ムーティによる《マクベス》作品解説や、イタリア・オペラ・アカデミー特別公演として、受講生の指揮による若い音楽家による《マクベス》抜粋も上演される。ちなみにこの受講生の顔ぶれは前回と同じであり、先頃ブザンソン国際指揮者コンクールで第1位を獲得した沖澤のどかも含まれている。
音楽祭の柱ともいえる「東京春祭ワーグナー・シリーズ」では、マレク・ヤノフスキ指揮NHK交響楽団により、《トリスタンとイゾルデ》(演奏会形式)が上演される。題名役はアンドレアス・シャーガーとペトラ・ラング。毎回ワーグナーをとりあげてきた同シリーズだが、これで主要作品は一巡することになる。
また、昨年話題を呼んだ「子どものためのワーグナー」でも、同様に《トリスタンとイゾルデ》が題材となる。こちらはバイロイト音楽祭提携公演で、独自の編曲によって上演される子ども向けバージョン。小学生でも楽しめるように工夫が凝らされているという。
「前回の《さまよえるオランダ人》では、子どもたちは予想以上に集中して舞台を見てくれた。子ども向けに《トリスタンとイゾルデ》はいかがなものかという声もあったが、子どもはこういった話題にピンとくるもの」(鈴木幸一・同音楽祭実行委員長)。ちなみに鈴木は小学生の頃からワーグナーを聴いていたのだとか。
今回より新たに読売日本交響楽団の演奏により「東京春祭プッチーニ・シリーズ」がスタートする。第1回となる今回は「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」の《三部作》が演奏会形式で上演される。「読響は近年ワーグナーなどドイツ・オペラを演奏する機会が多く、イタリア・オペラの経験は少なかった。とてもよいタイミングで、すばらしい機会をいただいた。日頃演奏機会の少ないレパートリーに挑戦できることをうれしく思う」(津村浩 読響常任理事・事務局長)。
これら大型公演をはじめ、ヤノフスキ指揮東京都交響楽団によるベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」や、恒例のミュージアム・コンサート、数多くの室内楽企画など、今回も多彩な公演が並ぶ。
「次の10年、20年も視野に入れて、毎年新しい趣向を取り入れながら、音楽祭を発展させていきたい」(鈴木実行委員長)という「東京・春・音楽祭」。春の上野がいっそうの賑わいを見せる。
取材・文:飯尾洋一
東京・春・音楽祭2020
2020.3/13(金)〜4/18(土)
東京文化会館、東京藝術大学 奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂
上野学園 石橋メモリアルホール、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、
国立西洋美術館、上野の森美術館、東京キネマ倶楽部 他
問:東京・春・音楽祭実行委員会03-6743-1398
https://www.tokyo-harusai.com/