実は今、ヴィオラの時代が到来しつつあるのかもしれない。なにしろ若くて優秀なヴィオラ奏者が次々と登場しているのだ。かつては脇役として扱われがちのヴィオラだったが、今やヴィオラ奏者がソリストとして脚光を浴びることもまったく珍しくはない。
イスラエル生まれのアミハイ・グロスもそんな新時代のヴィオラ奏者のひとり。ベルリン・フィルの第1ソロ・ヴィオラ奏者を務めるかたわら、旺盛なソロ活動をくりひろげている。
今回のリサイタルで演奏されるのは、シューマンの幻想小曲集op.73、ブラームスのヴィオラ・ソナタ第1番ヘ短調op.120-1、ショスタコーヴィチのヴィオラ・ソナタ op.147。ブラームス作品はクラリネット・ソナタが原曲だが、作曲者自身によりヴィオラ用に編曲されたもの。作品番号が示唆するように、ブラームスもショスタコーヴィチも晩年期の作品にあたる。ヴィオラならではの深みのある音色が玄妙な味わいを生み出す。
そういえば、この演奏会の直後に新元号が発表されることになっている。ヴィオラといえば皇太子さまの楽器であったが、これからは「陛下の楽器」になるわけだ。やはり、ヴィオラの時代が来ているのかも!?
文:飯尾洋一
【公演情報】
アミハイ・グロス(ヴィオラ)
〜シューマン、ブラームス、ショスタコーヴィチ
2019.3/29(金)19:00 東京文化会館 小ホール
●出演
ヴィオラ:アミハイ・グロス
ピアノ:オハッド・ベン=アリ
●曲目
シューマン:幻想小曲集op.73
I. Zart und mit Ausdruck(柔らかく、表情豊かに)
II. Lebhaft, leicht (活発に、軽やかに)
III. Rasch und mit Feuer (急速に、燃えるように)
ブラームス:ヴィオラ・ソナタ 第1番 ヘ短調 op.120-1
I. Allegro appassionato
II. Andante un poco adagio
III. Allegretto grazioso
IV. Vivace
ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ op.147
I. Moderato
II. Allegretto
III. Adagio
※当初発表の曲目より、一部変更となりました。
●チケット料金(税込)
S¥5,700 A¥4,100 U-25¥1,500