鈴木玲奈は、「春」にぴったりのアーティストである。声も姿も、開いたばかりの花のようなオーラをはなつ歌い手なのだ。
しなやかでみずみずしく、透明感と繊細な輝きに満ちた美声は、まさにこぼれる花々のよう。さらに鈴木の強力な武器は、高音の素晴らしさと技術力の高さである。天へ引き上げられていくような心地にさせてくれる、魅惑的な高音。その高音域で駆使される、小気味よいくらいに正確なコロラトゥーラには、まったく唖然とさせられる。可憐さとコケットリーが同居するステージプレゼンスも魅力的だ。
すでにこれまで、日本音楽コンクールをはじめとする内外の数々のコンクールで優勝。実力は広く認められ、日生劇場《後宮からの逃走》など大舞台の経験も着実に積んでいる。日本コロムビアがプロデュースする20代のアーティスト専用のレーベル「Opus One」から、CDデビューも果たした。
今回のリサイタルは、鈴木の「今」と「これから」が展望できる意欲的なプログラムが組まれている。定番の日本歌曲から、人生の味わいに富んだドビュッシーの若書き《4つの青春の歌》、乙女の心をユーモアも交えて描くプフィッツナーの《古い歌》、そしてコロラトゥーラ・ソプラノの真価が発揮されるドニゼッティ《ランメルモールのルチア》の「狂乱の場」まで。新人とは思えない芸風の広さだ。新生スターの「今」に立ち会える喜びを、春の上野で味わいたい。
文:加藤浩子
【公演情報】
ミュージアム・コンサート
鈴木玲奈 ソプラノ・リサイタル
2019.3/30(土)14:00 国立科学博物館 日本館講堂
●出演
ソプラノ:鈴木玲奈
ピアノ:濱野基行
●曲目
小林秀雄:演奏会用アリア「すてきな春に」
中田喜直:はなやぐ朝(組曲「魚とオレンジ」より)
山田耕筰:
君がため織る綾錦 (《風に寄せてうたへる春のうた》 より)
からたちの花
ドビュッシー:《4つの青春の歌》
ピエロ
月の光
パントマイム
出現
プフィッツナー:《古い歌》 op.33
ドニゼッティ:歌劇《ランメルモールのルチア》より
「あの方の優しい声が〜香炉はくゆり〜苦い涙を流せ」
※当初発表の曲目より変更となりました。
●チケット料金(税込)
全席自由¥3,600
※コンサート当日、常設展をご覧いただけます。
※一般発売:2019年1月27日(日)10:00〜