【特別インタビュー】ペトラ・ラング(2)歌曲を語る

 日本ではもっぱらオペラ歌手として知られているぺトラ・ラングだが、今回の来日では《ローエングリン》オルトルート役に加えて、歌曲リサイタルも催す。
取材・文:山崎太郎 写真:吉田タカユキ

■歌曲は日常の一部
「歌曲を歌うことは私にとって日常の一部です。小さな物語を語るようなもので、それがとても面白かったので、デビューする前の学生時代からずっと歌ってきました。すでに800曲がレパートリーに入っています。歌曲では、すべてをコントロールする高い技術と芸術性が求められます。顔の表情と声ですべてを表現しなければならないし、ただ大きく声を張り上げるのではなく、声量も音色もうまく配分しなければならないので、柔軟性がとても重要になるわけです。こういうことはとても大事だし、声にもよいので、公の場だけでなく、個人的にもレッスンで歌曲をたくさん歌うようにしています」

■ヴォルフと人気を二分したマルクス
 今回、取り上げる作曲家のなかでヨーゼフ・マルクスは多くの日本人にとって馴染みのない名前だ。
「今回の伴奏者エイドリアン・バイアヌは長年、この作曲家の歌曲を研究してきました。彼の師であるエリック・ヴェルバがマルクスの直弟子だったのです。マルクスには全部で160もの歌曲がありますが、そのうちの4分の3は1908年から12年のあいだに書かれています。第一次世界大戦前はフーゴー・ヴォルフの歌曲と同じぐらい人気があったようです。ただ、オペラ的に書かれている部分もあって、ヴェルバは本当の「声」を持った歌手にしか歌うことを薦めませんでした。歌手にもピアニストにも高い技術が要求されるので、今日あまり演奏されないのはそういう理由もあるでしょう」

■この曲のあとではもはや何も歌うことはできない
 マーラーの《リュッケルトの詩による五つの歌曲》は曲順について作曲家の指定がなく、いろいろな配列の可能性があるが・・・。
「いつも今回と同じ順番で歌うことにしています。特に終曲は絶対に『私はこの世に捨てられて』ですね。ただし、題名からイメージされるような悲しみ、人生がもう終わってしまったという意味の疲労感はこの曲には全くありません。むしろ、ようやく世の雑事や雑念から解き放たれ、純粋に自分の生き方を追求できるという希望を歌ったものではないでしょうか。老年にいたって達観の境地にたどりつき、自分自身と折り合いがついて、人生に完全な満足を覚えるわけです。この曲のあとではもはや何も歌うことはできないという心境になります。お客様の反応も素晴らしく、この曲を歌い終えると、2〜3分、静寂が続いたこともあるんですよ」

※インタビュー第3弾「ペトラ・ラングが語るワーグナー(指環4部作〜トリスタン)」は1月末公開予定です。

■東京春祭 歌曲シリーズ vol.22
ペトラ・ラング (ソプラノ)

2018.3.23(金)19:00 東京文化会館 小ホール

■出演
ソプラノ: ペトラ・ラング
ピアノ: エイドリアン・バイアヌ

■曲目
ブラームス:
 セレナード op.106-1
 われらはさまよい歩いた op.96-2
 愛のまこと op.3-1
 傷ついた私の心 op.59-7
 永遠の愛について op.43-1
マーラー:
《リュッケルトの詩による5つの歌曲》
 私はほのかな香りを吸い込む
 美しさゆえに愛するのなら
 私の歌を覗き見しないで
 真夜中に
 私はこの世から姿を消した
マルクス:
 森の幸せ
 雨
 日本の雨の歌
 ノクターン
 愛がおまえの心に宿ったなら
R. シュトラウス:
 響け op.48-3
 あなたは私の心の王冠 op.21-2
 あなたの黒髪を私の頭に広げてください op.19-2
 悲しみへの賛歌 op.15-3
 解き放たれて op.39-4
 懐かしい面影 op.48-1
 2人の秘密をなぜ隠すのか op.19-4

■料金
S席 ¥6,200 A席 ¥4,600 U-25* ¥1,500

■チケット発売日:11月26日(日)10:00
*U-25チケットは2018年2月9日(金)12:00発売開始
 

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.9
《ローエングリン》(演奏会形式/字幕・映像付)

2018.4/5(木)17:00、4/8(日)15:00 
東京文化会館 大ホール

■出演
指揮:ウルフ・シルマー
ローエングリン:クラウス・フロリアン・フォークト
エルザ:レジーネ・ハングラー
テルラムント:エギルス・シリンス
オルトルート:ペトラ・ラング
ハインリヒ王:アイン・アンガー
王の伝令:甲斐栄次郎
ブラバントの貴族:大槻孝志 髙梨英次郎 青山 貴 狩野賢一
小姓:今野沙知恵 中須美喜 杉山由紀 中山茉莉
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング、宮松重紀
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田村吾郎(RamAir.LLC)

■料金
S席 ¥22,100 A席 ¥18,000 B席 ¥13,900 C席 ¥10,800 D席 ¥7,700 E席 4,600 U-25* ¥2,500
■チケット発売日:11月26日(日)10:00
*U-25チケットは2018年2月9日(金)12:00発売開始