東京・春・音楽祭2019 La Femme C’est Moi〜クールマン、愛を歌う


 2015年、17年に東京・春・音楽祭の歌曲シリーズに登場し大人気だったメゾソプラノ、エリーザベト・クールマン。14年からの《指環》、とりわけ15年の《ワルキューレ》フリッカでオペラ歌手としての実力を示したクールマンは、2回の歌曲の演奏会でも、その練られたプログラムで聴き手に強い印象を残した。
 そんな彼女は近年、クラシック以外のジャンルの音楽を取り入れたコンセプチュアルなコンサートに活動の重心を移している。その最新シリーズである「La Femme C’est Moi」が、19年、東京春祭に登場。
 第1部は愛と時間を、第2部は政治をテーマに、シューベルトの歌曲からヴェルディ、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、ビゼーのオペラ・アリア、コール・ポーターの楽曲やマイケル・ジャクソン、ビートルズのナンバー、そしてキャバレー・ソングやシャンソンまで予定されており、選曲は多岐にわたる。
 これはコンサートというよりも、ひとつの完結したショー、いや抜群の歌唱力を持つクールマンが演じる音楽ドラマだと思った方がいい。編曲は、ヴィオラ奏者でもあるアレンジャー、チョー・タイシンが担当。バックを務める室内アンサンブルのメンバーは他にクールマンの長年のパートナーであるピアノのエドゥアルド・クトロヴァッツ、ウィーン・フィルの元首席チェロ奏者であるフランツ・バルトロメイ、同じくウィーン・フィルの首席コントラバス奏者ヘルベルト・マイヤーら、実力派が勢ぞろい。
 歌と音楽の可能性を追求し尽くしたパフォーマンスで、出色の一夜になるに違いない。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2019年1月号より)

2019.4/9(火)19:00 東京文化会館
問:東京・春・音楽祭チケットサービス03-6743-1398 
http://www.tokyo-harusai.com/