東京・春・音楽祭 2019 の聴きどころ

《リゴレット》や《オランダ人》など、15周年にふさわしい充実のラインナップ

左より:リッカルド・ムーティ C)Todd Rosenberg、大野和士 C)Rikimaru Hotta、フィリップ・オーギャン、エリーザベト・クールマン C)Ernst Kainerstorfer、ブリン・ターフェル C)Mitch Jenkins/DG、イゴール・レヴィット C)Robbie Lawrence

 すっかり春の上野の風物詩となった「東京・春・音楽祭」。2019年は節目の第15回を迎え、いっそう充実したプログラムが組まれた。
 聴きどころはたくさんあるが、まず筆頭に挙げたいのはリッカルド・ムーティの登場だ。今回、「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」として、ムーティが毎夏ラヴェンナで開催する若い音楽家のためのアカデミーが東京でも開かれるのだが、このアカデミーの一環としてムーティ指揮東京春祭特別オーケストラによるヴェルディの歌劇《リゴレット》(演奏会形式)が抜粋で上演される(4/4)。歌手陣はムーティが選ぶ気鋭たち。この音楽祭でたびたび名演を聴かせるムーティだが、また新たな歴史を刻む一夜となるのではないだろうか。
 毎年、大きな話題を呼ぶワーグナー・シリーズは第10回を迎える。今回は《さまよえるオランダ人》(演奏会形式)(4/5,4/7)。評判の若手ダーヴィト・アフカムがN響を指揮する。題名役は久々の来日となるブリン・ターフェル。名歌手たちによる最高水準の歌唱を期待できそうだ。アフカムのフレッシュな指揮ぶりがN響からどんなサウンドを引き出すかにも注目したい。
 恒例の合唱の芸術シリーズでは、シェーンベルクの大作、「グレの歌」がとりあげられる(4/14)。演奏は大野和士指揮の都響、東京オペラシンガーズ他。独唱陣も充実。後期ロマン派の頂点をなす作品ともいわれる野心作だが、あまりの大編成ゆえに実演に接する機会は貴重だ。選曲にあたってはマエストロ大野の希望が取り入れられたという。都響の高機能アンサンブルが最大限に活かされることだろう。
 第15回を記念するガラ・コンサートでは、フィリップ・オーギャン指揮の読響がミーガン・ミラー、エリーザベト・クールマンらの独唱陣と共演し、これまでこの音楽祭を飾ってきたオペラから、選りすぐりの名場面を演奏する(4/12)。オペラに定評のあるオーギャンの指揮が祝祭の一夜を華やかに飾る。また、クールマンは自身のコンセプトによるステージ(4/9)もあるので、こちらも楽しみだ。
 新たにスタートするバイロイト音楽祭との提携公演「子どものためのワーグナー《さまよえるオランダ人》」もおもしろい企画だ(3/21,3/23,3/24)。これはバイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナーが始めたもので、対象は小学生。原作をぐっと短縮し、子どもを飽きさせないような工夫が施されているという。春休みにワーグナーを体験できる小学生がうらやましい!
 「東京・春・音楽祭」の魅力は大型公演ばかりではない。東京都美術館や国立西洋美術館、国立科学博物館など、上野の文化施設を会場としたミュージアム・コンサートも数多く開催される。都美術館の「クリムト展」と連動したプログラムも興味深い。東京文化会館小ホールでは、チェンバロのリチャード・エガー(3/23)やピアノのイゴール・レヴィット(4/11,4/13)といった異才のリサイタルが目をひく。ヴァイオリンのノア・ベンディックス=バルグリーらによる「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」(3/27)など、室内楽の充実ぶりにも目を見張る。
 百花繚乱の上野の春が待ち遠しい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年12月号より)

東京・春・音楽祭 2019 
2019.3/15(金)〜4/14(日)
東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、上野学園 石橋メモリアルホール、
国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館、東京キネマ倶楽部 他
問:東京・春・音楽祭チケットサービス03-6743-1398 
※各公演の発売日などの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.tokyo-harusai.com/