リッカルド・ムーティに高松宮殿下記念世界文化賞

 第30回高松宮殿下記念世界文化賞(主催:公益財団法人日本美術協会)音楽部門の受賞者に指揮者のリッカルド・ムーティ(イタリア)が選ばれた。ムーティは、去る10月23日、天皇、皇后両陛下臨席のもと、「高松宮殿下記念世界文化賞」30周年記念レセプションに出席。続いて、受賞者個別記者懇談会と、同協会総裁の常陸宮殿下、同妃殿下出席のもと、東京・元赤坂の明治記念館で行われた授賞式に出席した。
(2018.10.23 ホテルオークラ東京/明治記念館
Photo:寺司正彦(ホテルオークラ東京)/T.Shiroma/Tokyo MDE(明治記念館))

受賞者個別記者懇談会より
Photo:寺司正彦

 「高松宮殿下記念世界文化賞」は、日本美術協会の設立100周年を記念し1988年に創設。前総裁高松宮殿下の「世界の文化芸術の普及向上に広く寄与したい」との遺志にもとづき、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で世界的に顕著な業績をあげた芸術家に毎年授与される。5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られる。

 ムーティは、1941年ナポリ生まれ。ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院などで学び、67年にグィード・カンテッリ国際指揮者コンクールで優勝。その後は、フィレンツェ五月音楽祭の首席指揮者、フィルハーモニア管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督などを歴任。また、86年から2005年までミラノ・スカラ座の音楽監督を務めた。10年にシカゴ交響楽団の音楽監督に就任した。今年1月には、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートで5度目の登壇を果たした。
 若手指揮者の育成にも尽力し、イタリアのラヴェンナで15年から「イタリア・オペラ・アカデミー」を開催。19年春からは、「東京・春・音楽祭」の一環として、3年にわたって東京でも同アカデミーを実施することが発表されている。また、直前の同年1月にはシカゴ響を率いての来日が予定されている。

受賞者個別記者懇談会より
Photo:寺司正彦

 記者懇談会でムーティは若い指揮者を育てる意義とヴェルディを演奏することについて、次のように語った。
「指揮者の才能が枯渇しているわけではありません。指揮者はキノコのように次から次へと生まれている。しかし、準備が欠けている。指揮者にとって必要なことは“準備”です。才能ある人が教養を身につける時間が不足しているのです。様々な準備をして、それから棒を振る練習をすべきです。
 世界中でヴェルディのオペラは上演されていますが、すべての作品が演奏されているわけではありません。しかも、作曲された当時の形できちんと演奏されることは稀です。モーツァルトの音楽には誰も手を加えないのに、なぜヴェルディの音楽には手を加えてしまうのか? ヴェルディの音楽は正しく演奏されなければならない」

授賞式後のレセプション会場にて。音楽部門選考委員を務めた指揮者の井上道義と
Photo:T.Shiroma/Tokyo MDE

高松宮殿下記念世界文化賞
http://www.praemiumimperiale.org/

リッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」
http://www.tokyo-harusai.com/program/page_5873.html

東京・春・音楽祭
http://www.tokyo-harusai.com/