東京春祭マラソン・コンサート vol.8 ロッシーニとその時代(没後150年記念) 〜混乱の世を生き抜く知恵と音楽

 大きなテーマを設定し、様々な視点からそのテーマを深掘りしていく5公演が一日で開催される「東京春祭マラソン・コンサート」。一流の音楽家たちの演奏を楽しみつつ、作品とその背景や歴史などを関連づけて体験できる、東京春祭ならではの“楽しみながら学べる”名物公演である。

東京春祭マラソン・コンサート vol.7公演より 
写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:高嶋ちぐさ

 第8弾のテーマは、今年アニバーサリーを迎えたロッシーニ。19世紀、母国イタリアでの活躍や名声はもちろんのこと、ベートーヴェン健在のウィーンでも絶大な人気を博すなど、ヨーロッパのオペラ界で人気絶頂だったロッシーニだが、わずか37歳でオペラ作曲から引退してしまい、その後は40年近く「隠退」生活を送ったとされる。
 この日の5公演は、多面的にロッシーニの創作や生涯に迫るテーマ設定がなされている上、ハイドン、パイジェッロ、パガニーニ、ドニゼッティに、ルドルフ大公の作品や、《ウィリアム・テル》を題材にしたグレトリーやウェーバーなど、周辺の作曲家の名作からレア作品まで、多種多彩な作曲家の楽曲を楽しめる。
 出演者には俊英からベテランまで、活躍中の音楽家たちが並ぶ。ドイツを中心に活躍する高橋礼恵&ビョルン・レーマンの名ピアノ・デュオ、リスト国際ピアノコンクールで日本人として初優勝以来リサイタルを重ねる岡田将、東京音楽コンクールと日本音楽コンクールを制したクラリネットのヴィルトゥオーゾ、コハーン・イシュトヴァーン、東京フィルのコンサートマスター依田真宣を中心とするカルテットなど、実力者たちが多様な組み合わせで楽しませてくれる。
 これらの公演の企画構成とトークを担当して5回のコンサートに筋を通すのが、ヨーロッパ文化史研究家の小宮正安。全公演で行われるわかりやすいトークで演奏会をより楽しめるとともに、絶好の学びの機会ともなるはず。名作曲家ロッシーニの魅力を再発見する、充実の一日。

小宮正安

東京春祭マラソン・コンサート vol.8
ロッシーニとその時代(没後150年記念)
〜混乱の世を生き抜く知恵と音楽

2018.3/25 (日)[各回約60分]
東京文化会館 小ホール

企画構成・お話:小宮正安(ヨーロッパ文化史研究家/横浜国立大学大学院 都市イノベーション学府 教授)

【第Ⅰ部】11:00開演(10:45開場)
悲喜こもごものロッシーニ劇場
悲劇喜劇を問わず、傑作オペラを次々と作ったロッシーニ。時にオペラの結末を無理矢理作り変えることさえおこなった、彼ならではの処世術。

●出演
ヴァイオリン:依田真宣、平塚佳子
ヴィオラ:中村洋乃理
チェロ:湯原拓哉
コントラバス:髙橋洋太
ソプラノ:天羽明惠
メゾ・ソプラノ:富岡明子
バリトン:吉川健一
合唱:二期会合唱団
 テノール:岡本泰寛、高柳 圭
 バス:押見春喜、髙田智士
ピアノ:朴 令鈴
ピアノ・デュオ・タカハシ | レーマン

左上より:依田真宣、平塚佳子、中村洋乃理 C)franco tadeo inada、湯原拓哉
左下より:髙橋洋太 C)堀田力丸、天羽明惠 C)Akira Muto、富岡明子、吉川健一


●曲目
ロッシーニ(シェーンベルク編):歌劇《セビリアの理髪師》序曲
パイジェッロ:歌劇《セビリアの理髪師》 より 「退屈は禁物で」
ロッシーニ:
 歌劇《セビリアの理髪師》 より 「おいらは町の何でも屋」
 弦楽のためのソナタ 第6番 ニ長調 より 第3楽章 嵐
ハイドン:弦楽四重奏曲 第37番 ロ短調 Hob.III:37 より 第1楽章
ロッシーニ:歌劇《パルミラのアウレリアーノ》 より 「運命の時がやって来ました」
モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》 より 「準備はできた 〜 男たちよ、眼を開けろ」
ロッシーニ:歌劇《タンクレディ》 より 「ああ、祖国よ! 〜 胸騒ぎに満ちて」

【第Ⅱ部】13:00開演(12:45開場)
辣腕興行師バルバイヤとの出会い
フランス革命、ナポレオンの台頭、保守反動の嵐…。乱世を逆手にとって頭角を現した稀代の興行師、バルバイヤとの交流に見る、若きロッシーニの姿。

●出演
ヴァイオリン:依田真宣、平塚佳子
ヴィオラ:中村洋乃理
チェロ:湯原拓哉
ソプラノ:天羽明惠
メゾ・ソプラノ:富岡明子
テノール:糸賀修平
合唱:二期会合唱団
 ソプラノ:青木雪子、盛田麻央
 アルト:喜田美紀、実川裕紀
 テノール:岡本泰寛、高柳 圭
 バス:押見春喜、髙田智士
ピアノ:岡田 将、朴 令鈴

左:岡田 将 右:朴 令鈴


●曲目
ロッシーニ(A.ペッシンガー編):歌劇 《オテッロ》 序曲
ベッリーニ:歌劇《ビアンカとフェルナンド》 より 「悩める父君を」
チマローザ:ソナタ ニ長調
ロッシーニ:歌劇《イングランドの女王エリザベッタ》 より 「心からの感謝を捧げ」
パガニーニ:モーゼ幻想曲 (ロッシーニの 《エジプトのモーゼ》 より 「汝の星をちりばめた玉座に」 のテーマによる序奏と変奏曲)
ドニゼッティ:歌劇《ロベルト・デヴリュー》 より 「君に告げよう、この最後の涙の時に」
ロッシーニ:歌劇《湖上の美人》 より 「この瞬間にたくさんの愛が」

【第Ⅲ部】15:00開演(14:45開場)
「ロッシーニ・フィーバー」の諸相
生誕の地イタリアはもとより、ウィーンやパリといったヨーロッパの大都市でも大成功を収め、話題をさらい続けたロッシーニ。彼の絶大な存在感がもたらした影響。

コハーン・イシュトヴァーン

●出演
クラリネット:コハーン・イシュトヴァーン
メゾ・ソプラノ:富岡明子
テノール:糸賀修平、小堀勇介
バリトン:吉川健一
合唱:二期会合唱団
 ソプラノ:青木雪子、盛田麻央
 アルト:喜田美紀、実川裕紀
 テノール:岡本泰寛、高柳 圭
 バス:押見春喜、髙田智士
ピアノ:岡田 将、朴 令鈴
ピアノ・デュオ・タカハシ | レーマン

●曲目
シューベルト:イタリア風序曲 第1番ニ長調 D590
ロッシーニ:
 歌劇《ゼルミーラ》 より 「運命よ!お前に従うのなら」
 歌劇《ゼルミーラ》 より 「懐かしき地よ!」
ルドルフ大公:ロッシーニ変奏曲 (ロッシーニの 《ゼルミーラ》 より 「運命よ!お前に従うのなら」のテーマによる変奏曲)(抜粋)
ロッシーニ:
 歌劇《ラ・チェネレントラ》 より 「二人の娘のどちらかが」
 歌劇《ラ・チェネレントラ》 より 「私はもう暖炉のそばで」
ディアベリ:ロッシーニ・ワルツ より (1, 2, 3, 5, Coda)
ロッシーニ:歌劇《コリントの包囲》 より 「敬愛するあなたを〜偉大なる神は」

【第Ⅳ部】17:00開演(16:45開場)
英雄ウィリアム・テルの変容
ロッシーニにとって最後のオペラとなった《ウィリアム・テル》。革命の時代に市民階級の崇拝を集め、数多くの芸術家を魅了したスイスの英雄のイメージ。

●出演
ソプラノ:馬原裕子
テノール:糸賀修平、小堀勇介
バリトン:吉川健一
合唱:二期会合唱団
 ソプラノ:青木雪子、盛田麻央
 アルト:喜田美紀、実川裕紀
 テノール:岡本泰寛、高柳 圭
 バス:押見春喜、髙田智士
ピアノ:岡田 将、朴 令鈴

左より:馬原裕子 C)Ryosuke Ishida、糸賀修平 C)Taira Tairadate、小堀勇介

左上より:青木雪子、盛田麻央、喜田美紀、実川裕紀
左下より:岡本泰寛、高柳 圭、押見春喜、髙田智士

●曲目
J.シュトラウス1世:ウィリアム・テル・ギャロップ
A.グレトリー:
 歌劇《ウィリアム・テル》序曲
 歌劇《ウィリアム・テル》 より 「けっしてならぬ」
 歌劇《ウィリアム・テル》 より 「クレルヴォーのロンスヴォー」
 歌劇《ウィリアム・テル》 よりフィナーレへの転換曲
B.A.ウェーバー:
 劇音楽《ヴィルヘルム・テル》 より 「草原よ さようなら」
 劇音楽《ヴィルヘルム・テル》 より 「天には雷鳴が轟き」
 劇音楽《ヴィルヘルム・テル》 より 「死の近づくのは早く」
 劇音楽《ヴィルヘルム・テル》 より 「農民の婚礼の行進」
ロッシーニ:
 歌劇 《ギヨーム・テル》 より 「ティロリエンヌ」
 歌劇 《ギヨーム・テル》 より 「我が父の庵よ〜友よ、友よ」
ロッシーニ(リスト編):歌劇《ギヨーム・テル》序曲

【第Ⅴ部】19:00開演(18:45開場)
食えない男の痛快人生
37歳で実質的にオペラの筆を折ったロッシーニ。その後、40年近くに及ぶ「隠退」生活の中で生み出された作品に浮かび上がる、彼一流の世界観。

●出演
ソプラノ:天羽明惠、馬原裕子
テノール:小堀勇介
合唱:二期会合唱団
 ソプラノ:青木雪子、盛田麻央
 アルト:喜田美紀、実川裕紀
 テノール:高柳 圭
 バス:押見春喜、髙田智士
ピアノ:岡田 将、朴 令鈴
ピアノ・デュオ・タカハシ | レーマン
ハルモニウム:大木麻理

左:ピアノ・デュオ・タカハシ | レーマン 右:大木麻理


●曲目
ロッシーニ(チェルニー編):《スターバト・マーテル》 より 「アーメン」
タドリーニ:《3つのアリエッタ》 より 「旅路の再会」
マイヤベーヤ:歌劇《ユグノー教徒》 より 「美しき地よ」
ピアーソル、ヴァイセ(、ロッシーニ):猫の二重唱
ロッシーニ:
 踊り
 楽しい汽車の小旅行(滑稽描写)
 《小荘厳ミサ曲》 より 「クム・サンクト・スピリトゥ」
 《小荘厳ミサ曲》 より 「アニュス・デイ」

 

●料金

席種 全席指定
1日券
(5公演通し券)
第Ⅰ部
(各回券)
第Ⅱ部
(各回券)
第Ⅲ部
(各回券)
第Ⅳ部
(各回券)
第Ⅴ部
(各回券)
料金 ¥7,700 ¥2,100