2006年も今年に続きオペラ花盛り。しかも外来公演を含めヴェルディの大作が立て続けに上演され、ヴェルディ・ファンとしては嬉しい1年となる(財布の中はきびしいが…トホホ)。で、先陣を切るのが音楽監督を務める小澤征爾の「東京のオペラの森」。昨年、アグネス・バルツァら強力なキャスティングとオーケストラの精緻なアンサンブルで話題を呼んだ《エレクトラ》に続いて、ヴェルディ後期の大作《オテロ》を。
ウィーン国立歌劇場など欧米の名門歌劇場との共同制作も売りものとしている本プロジェクトだが、今年のテーマ作曲家であるヴェルディの《オテロ》は本場ウィーンに先駆けて上演されるワールド・プレミエ公演。東京で最新版が観られるなんて気分いいじゃないですか。演出に当たるのは女性演出家クリスティーネ・ミーリッツ。ウィーンでもこれまで斬新な演出を披露し“賛否両論”を巻き起こしてきた人だけに相当刺激的な舞台が観られるのは必至。そもそも《オテロ》というオペラ、女性の演出家が挑んだ例ってこれまであまりなかったと思う。男性中心の心理ドラマということもあって女性に不向き(?)だったのか。でも不条理な死を遂げるデズデモーナの心境は女性の方が理解できるだろうし(それも偏見?)、女性の目から観たオテロとイヤーゴという人間像がどのように描かれるのか演劇的な意味で(またジェンダー的な観点からも)とても興味がある。
タイトル・ロールはドミンゴに続く「オテロ歌い」として世界中から注目されているクリフトン・フォービス、対するイヤーゴは今やヴェルディ上演に不可欠な存在となったラード・アタネッリ、デズデモーナには美貌と美声を兼ね備えたクラッシミラ・ストヤノヴァと実力派をずらっと揃え、万全の態勢だ。小澤も久しぶりのヴェルディものということもあり、意欲満々。覇気みなぎる熱演が期待できそうだ。
そして、リッカルド・ムーティ。今年のウィーン・フィルと共に来日する彼の熱い棒で、ヴェルディの「レクイエム」を聴かせてくれる。ムーティが邦人オーケストラを振るのはこれが初めてで、考えてみたらすごいことだ。こちらもソリストが豪華絢爛。最近、リリコ・スピントとなり歌唱に迫力を増した美人ソプラノ、バルバラ・フリットリ、日本でも大人気のテノール、ジュゼッペ・サッバティーニ。そしてザルツブルク音楽祭でモーツァルトのオペラの主演を歌いその音楽性が絶賛されているバス、イルデブランド・ダルカンジェロも登場。これだけでオペラ1本分軽く上演できそうな贅沢な顔ぶれだ。3人ともイタリア人だし、ムーティとの呼吸もぴったりなはず。これまたチケット争奪戦となりそうだ。
《オテロ》「レクイエム」共に演奏は、東京のオペラの森管弦楽団、東京のオペラの森合唱団。
上野が“ヴェルディの森”になる日も近い。
(編集部・城閣勉)
(ぶらあぼ2005年11月号から)
★オペラ:2006年3月24日(金)、27日(月)、30日(木)、4月2日(日)・東京文化会館
★オーケストラ:4月6日(木)・東京文化会館、8(土)・すみだトリフォニーホール
問:東京のオペラの森実行委員会03-3296-0600
www.tokyo-opera-nomori.com/