Trio Accordーー白井 圭(ヴァイオリン)、門脇大樹(チェロ)、津田裕也(ピアノ)

 いかなる困難にも屈しない男ーーベートーヴェンをそう称えてよいとしたら、生誕250年が世界中を未知の感染症の不安に浸した2020年に当たっても、その音楽は人間精神の不滅を高らかに謳い上げていたはずだ。もともとベートーヴェン作品の多くを織りなす構想を掲げていた『東京・春・音楽祭 2020』に、Trio Accord(トリオ・アコード)は先陣を切って登場し、ピアノ・トリオ全曲演奏会を3日間にわたり敢行した。この成果を踏まえてベートーヴェンのトリオop.70の2作をレコーディング、初めてのCDも昨秋リリースする運びとなった。

 昨春ベートーヴェンの始まりの光景から踏み出したトリオ・アコードが、この春からはボヘミアへとまなざしを向けて、ドヴォルザークとマルティヌーをみつめる。ドヴォルザークのピアノ三重奏曲は現存するもので4作が遺されているが、その始まりと終わり、第1番変ロ長調op.21と、有名な「ドゥムキー」第4番ホ短調op.90がまず採り上げられる。

 連作の幕開けを告げる第1番は1875年の作で、青年らしい覇気と情熱が発揮され、闘志といってもよい鋭い意気も帯びている。後期ロマン主義を乗り越え、スメタナの指標のもとで、独自の音楽を追い求めるドヴォルザークの心が熱い。彼にとっての「国民楽派」の視座は汎スラヴ的な広がりをもつが、渡米の数年前からその最大の高揚はみられる。1891年に完成し、代表作となった「ドゥムキー」はその最たるもので、ソナタ形式をとらない多楽章組曲のかたちで全曲が有機的にまとめ上げられている。といっても、ウクライナ起源のバラッド“ドゥムカ”の様式を厳密に踏まえたわけではなく、ドヴォルザークはより瞑想的で内省的な方向で、生来ともいえる抒情を洗練させていった。トリオ・アコードの歌心も存分に溢れ出すことだろう。

 先達の2作を両端に置いて演奏されるのが、マルティヌーのピアノ三重奏曲第2番ニ短調 H.327。時代を下って1950年、マルティヌーのアメリカ時代に書かれたこの抒情的なトリオでも、歌の強さは深く生きている。
文:青澤隆明

左より:白井 圭、津田裕也、門脇大樹
(C)T.Tairadate


【公演情報】
Trio Accordーー白井 圭(ヴァイオリン)、門脇大樹(チェロ)、津田裕也(ピアノ)

2021.3/29(月)18:30 上野学園 石橋メモリアルホール

●出演
トリオ・アコード
 ヴァイオリン:白井 圭
 チェロ:門脇大樹
 ピアノ:津田裕也

●曲目
ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調 op.21
マルティヌー:ピアノ三重奏曲 第2番 二短調 H.327
ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調 op.90 《ドゥムキー》

●チケット発売
S・A席 および U-25:3/14(日)10:00
ライブ・ストリーミング配信:3/14(日)12:00

●料金(税込)
S¥5,000 A¥3,500 U-25¥1,500
ライブ・ストリーミング配信 ¥1,500


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