戸田弥生(ヴァイオリン)の室内楽

 日本屈指の実力派ヴァイオリニスト・戸田弥生が、実力者たちと奏でる注目の室内楽コンサート。しかも演目が魅力に溢れている。
 戸田弥生は、1993年エリーザベト王妃国際コンクール優勝以来、真摯かつパッショネイトな演奏で聴く者を魅了してきた、日本を代表するヴァイオリニストの一人。現在は円熟の域に入り、昨年聴いた無伴奏リサイタルでも、濃密かつ雄弁な音楽に感嘆させられた。今回共演するのは、N響コンサートマスターの伊藤亮太郎(ヴァイオリン)、都響の特任首席奏者等を務める店村眞積(ヴィオラ)、N響次席奏者の村松龍(ヴィオラ)、ソリストの横坂源(チェロ)、ソロや客演首席奏者として活躍する上森祥平(チェロ)の5名。これだけの名手が揃えば、充実した室内楽が展開されるのは間違いない。

 1曲目は、ストラヴィンスキーの弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ。これはきわめて峻烈な音楽で、荒々しい迫力に圧倒されること請け合いだ。おつぎはチャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」。この形態の代表作の1つで、濃厚な音楽が終始続く。そしてシェーンベルクの「浄められた夜」。これまた同形態の看板曲であり、後期ロマン派の作風で書かれた美しく陶酔的な名作だ。六重奏の両曲は有名だが、合奏版での演奏が多く、オリジナルの編成で耳にする機会は意外に少ない。しかも両曲共に味わえるとなれば、室内楽ファンのみならず見逃せない一夜となる。
文:柴田克彦


【公演情報】
戸田弥生(ヴァイオリン)の室内楽
〜シェーンベルク 《浄められた夜》

2019.4/2(火)19:00 東京文化会館 小ホール

●出演
ヴァイオリン:戸田弥生、伊藤亮太郎
ヴィオラ:店村眞積、村松 龍
チェロ:横坂 源、上森祥平

●曲目
ストラヴィンスキー:弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ
チャイコフスキー:弦楽六重奏曲 ニ短調 op.70《フィレンツェの思い出》
 I. Allegro con spirito
 II. Adagio cantabile e con moto
 III. Allegretto moderato
 IV. Allegro vivace
シェーンべルク:《浄められた夜》op.4

●チケット料金(税込)
S¥5,200 A¥4,100 U-25¥1,500