【インタビュー】カルラ・デルフラーテ芸術監督補が語る、ケルビーニ管

 マエストロ・ムーティが10年以上にわたり心血を注ぎ育て上げたルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団(ケルビーニ管)。イタリアの若き精鋭たちにより編成された同オーケストラと、日本の若手トップ奏者たちによる特別編成オーケストラが音楽祭の開幕を祝う。
 カルラ・デルフラーテ・芸術監督補に話を聞いた。
(取材・文:田口道子 写真:田口道子/Silvia Lelli )

カルラ・デルフラーテ・芸術監督補(Photo:田口道子)

カルラ・デルフラーテ・芸術監督補(Photo:田口道子)

■ケルビーニ管が発足した経緯を教えてください。
 長い間、マエストロ・ムーティはご自身の体験を若い世代の音楽家たちに伝えたいという望みを持っていました。それが実現したのがケルビーニ管です。オーケストラという共同体の中での経験は社会での経験ともいえるもので、学校のオーケストラ演習では学びきれない多くのことを、演奏を通して学んでいくという目的を持っています。音楽を習得するばかりでなく、音楽家として生きてゆくための人間形成にも役立てたいとの願いです。

■いつ創設されたのですか?
 2004年にオーケストラの基礎ができ、2005年に財団という形で発足しました。ピアチェンツァとラヴェンナの二つの市がマエストロの望みに賛同して大きな協力をしてくれました。

■メンバーはどのように選ばれるのですか?
 イタリア国内ばかりでなく欧州共同体の音楽院を卒業した18歳から27歳までの若者を対象にオーディションが行われます。養成期間は3年間ですから、ほぼ毎年いくつかのパートでオーディションが行われ、メンバーが3年ごとに代わっていきます。第一次予選とフィナーレがあって、器楽のコンクールのように課題曲を演奏します。審査員はマエストロ・ムーティを中心に、マエストロが信頼する欧州の著名なオーケストラの首席奏者が厳正な審査をします。

■国籍や男女比はどうですか?
 現在の団員は90パーセントがイタリア人で、スペイン人とドイツ人が入っています。男性が少し多くて60パーセントですが、だんだん女性も多くなる傾向にあります。

テアティニ教会を改装したケルビーニ管の稽古場の様子 Photo by (C) Silvia Lelli

テアティニ教会を改装したケルビーニ管の稽古場の様子
Photo by (C) Silvia Lelli

■ヨーロッパにはEUユース・オーケストラがありますね。イタリアにも他にユースオーケストラがありますが、それらとの違いは?
 ユースオーケストラは1年のうちにある期間を決めて、選ばれた曲目を習得することを目的としますが、ケルビーニ管は演奏活動を通して経験を深めていくことを目的としています。リハーサルと本番で年間140日から150日も活動していますよ。

■ということはケルビーニ管は常設ということですか?
 常設と言ってよいでしょうね。一般のオーケストラと変わりはありません、ただ、3年ごとにメンバーが変わっていくという違いがあるだけです。

■日本にもマエストロ・小澤が主催する小澤征爾音楽塾があって、世界で活躍できる若手演奏家を育てています。オペラもシンフォニーも両方演奏していますが、ケルビーニ管も同じですか?
 ケルビーニ管はシンフォニーを演奏することから出発しました。でも、イタリア人作曲家の作品にはオペラ作品が多く、マエストロ・ムーティはオペラを演奏することは大切だとお考えです。特にナポリ派オペラプロジェクトとしてザルツブルグ音楽祭の聖霊降臨祭に5年連続で出演して大成功を収めたことは素晴らしい経験になりました。

■2007年のザルツブルグ聖霊降臨祭には、チマローザのオペラ《ドン・カランドリーノの帰還》蘇演でデビューしましたね。あの作品が初めてのオペラですか?
 それ以前には、2006年にラヴェンナでムーティ指揮の《ドン・パスクワーレ》に出演しています。

■マエストロ・ムーティと団員の関係は?
 マエストロはシカゴ響やウィーン・フィルはじめ、世界の名だたるオーケストラを指揮してイタリアに帰っていらっしゃって、すぐにケルビーニ管のリハーサルに入られます。超すばらしい演奏が耳に残っていると思うので、どうしてもマエストロの反応が気になってしまうのですが、マエストロは色々なエピソードを話して緊張を解いてくれます。本番で失敗して泣きながらマエストロに謝りに行く奏者を何人も見ましたが、マエストロは決して咎めることなく、かえって勇気づけてくれています。本当に人間味溢れる、素晴らしい関係を築いていると思います。

ラヴェンナでの稽古場の様子 Photo by (C) Silvia Lelli

ラヴェンナでの稽古場の様子
Photo by (C) Silvia Lelli

■ケルビーニ管に対する団員の思いは?
 3年間の養成期間を終えて卒業していった元団員は口々に人生のうちで最も素晴らしい経験ができたと言っています。結婚式の写真や子供が生まれた報せなど、毎日のように元団員からメッセージが届きます。団員たちは青春の貴重な時間を素晴らしい指導者のもとで音楽に浸れることを幸せに感じています。

■日本の若手演奏家と共演することについては?
 参加者は全員初めて日本に行くので、今から大いに楽しみにしています。ケルビーニ管はラヴェンナ・フェスティヴァルの「友情の道」の催しで世界各地のオーケストラと共演をしていますので、国や習慣や言語の異なるオーケストラと一緒に演奏することは問題ではありません。日本の若手演奏家との共演で多くのことを学び、素晴らしい思い出を作って、きっと成長して帰国することでしょう。

テアティニ教会を改装したケルビーニ管の稽古場の様子 Photo by (C) Silvia Lelli

テアティニ教会を改装したケルビーニ管の稽古場の様子
Photo by (C) Silvia Lelli

ルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団
http://www.orchestracherubini.it

◆日伊国交樹立150周年記念リッカルド・ムーティ指揮日伊国交樹立150周年記念オーケストラ〜東京春祭特別オーケストラ&ルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団
2016.3.16 [水] 19:00東京文化会館
2016.3.17 [木] 19:00東京芸術劇場

■出演
指揮:リッカルド・ムーティ
管弦楽:日伊国交樹立150周年記念オーケストラ
    〜東京春祭特別オーケストラ&ルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団
バス:イルダール・アブドラザコフ
合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ、宮松重紀
児童合唱指揮:長谷川久恵

■曲目
ヴェルディ:
 歌劇 《ナブッコ》 序曲
 歌劇 《ナブッコ》 第1幕 より 「祭りの晴着がもみくちゃに」
 歌劇 《アッティラ》 第1幕 より アッティラのアリアとカバレッタ
「ローマの前で私の魂が…あの境界の向こうで」

 歌劇 《マクベス》 第3幕 より 舞曲
 歌劇 《運命の力》 序曲
 歌劇 《第1回十字軍のロンバルディア人》 第3幕 より
「エルサレムへ、エルサレムへ」

ボイト:歌劇 《メフィストフェレ》 プロローグ

料金
S:¥18,500 A¥14,400 B¥10,300 C:¥7,200
 ※ U-25チケット(¥2,000は、2016年2月12日(金)12:00発売開始(公式サイトのみで取扱)