eぶらあぼ 2026.3月号
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尾高忠明 ©Martin Richardson本條秀慈郎 ©TAMAKI YOSHIDA岡山フィルハーモニック管弦楽団岡山フィルハーモニック管弦楽団 東京特別公演秋山和慶の遺志を胸に、尾高忠明と挑む初の東京公演73文:林 昌英文:江藤光紀 岡山フィルハーモニック管弦楽団が新緑の5月、東京特別公演をサントリーホールで開催する。 岡山フィルは1992年に創設された、岡山県初のプロ楽団。 岡山シンフォニーホールを拠点に、定期公演から地域振興まで多彩な活動を重ねてきた。東京公演は創立30周年での実施を計画していたが、コロナ禍で延期になったとのこと。 今年ついに実現に至り、初のサントリーホールでその高い実力を東京で披露することになる。 2013年にハンスイェルク・シェレンベルガーが初の首席指揮者となり、22年からは秋山和慶がミュージックアドバイザーを務めた。 秋山が日本各地のオーケストラのポストを務め、水準を高めてきたことはよく知られるが、残念ながら昨年1月に急逝。 岡山フィルは秋山が最後に心血を注いだ楽団の一つとなった。そのコンビでの成果を聴かせることは叶わなくなったが、代わ 横浜みなとみらいホールが主催する「Just Composed in Yokohama ―現代作曲家シリーズ―」は、気鋭の作曲家への新作委嘱や再演を通して、現代の創造の最前線を示し続けてきた連続企画だ。  来る3月の 公 演 は、委 嘱 作 曲 家 の選定委員を務める本條秀慈郎と、彼を中 心とする演 奏グル ープJ-TRAD Ensemble MAHOROBAが出演する。秀慈郎は三味線の名手として邦楽の可能性を国際的視野で探求し続けており、今回は尺八の川村葵山、箏・二十五絃箏の木村麻耶、邦楽囃子の堅田喜三郎とともに、日本の伝統的な「音の精神」をテーマに据え新時代の邦楽の形を提示する。 邦楽奏者のみの演奏会もシリーズ初となる。 邦楽の伝統的な響きを現代音楽の文脈で再構築したプログラムも刺激的だ。ハイライトはドイツ在住の岸野末利加による委嘱新作「波紋」(Ripples)りに東京公演の大役を引き受けたのが尾高忠明である。 尾高と岡山フィルの初共演は2007年、「フレッシュな印象があった」と振り返る。今度の共演について「秋山先生が素晴らしいレベルに引き上げた功績は語り継がれるでしょう。その岡山フィルの東京公演をご一緒できるのを心待5/9(土)14:00 サントリーホール問 岡山フィルハーモニック管弦楽団事務局086-234-7177https://www.okayama-symphonyhall.or.jp/okaphil/で、三味線、尺八、二十五絃箏、囃子というユニークな編成の作品。 酒井健治の「Wavering」は三味線独奏による改訂版初演、藤家溪子の「風神」は秀慈郎による尺八・三味線/胡弓・二十五絃箏への編曲版で、それぞれ旧作を新しい視点から編みなおす。 他に北爪道夫「螺旋」、望月京「ぎんの音」、松平頼暁「デュオローグ」といった同時代音楽を牽引してきた作曲家の作品を並べ、揺らぎ、風、螺旋といった邦楽器独特の表現と対話を通して現代音楽の諸相を探る。その現在地を体感したい。 また藤家作品では、秀慈郎が三味線を持ち替えて胡弓を演奏する点も注目だ。胡弓の柔らかで粘り気のある音色が他の邦楽器との対比によって表現空間をどう深めていくのだろうか。3/14(土)15:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000https://yokohama-minatomiraihall.jpちにしています」と語る。 その意気込みを示すべく選ばれた曲は、尾高が得意とするラフマニノフ。しかもピアノ協奏曲と交響曲の両第2番という、旋律美とロマンあふれる名曲プロ。さらに協奏曲のピアニストは岡山出身の中桐望。理想的な出演者と演目で、岡山フィルの現在が示される。Just Composed 2026 in Yokohama ―現代作曲家シリーズ―「日本音楽のハイブリッド ポート」本條秀慈郎が導く邦楽×現代音楽の世界

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