eぶらあぼ 2025.11月号
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山田和樹 ©Zuzanna Specjal熊木夕茉 ©GODA加耒 徹森野美咲 ©Taro Morikawaヘルムート・ドイチュ ©Shirley Suarez第776回 東京定期演奏会11/28(金)19:00、11/29(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp11/21(金)19:00 第一生命ホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212  https://www.japanarts.co.jp65“世界のヤマカズ”が鮮烈に描く近代フランスの色彩文:柴田克彦文:長井進之介 11月の日本フィル東京定期の指揮は山田和樹。 モンテカルロ・フィルやバーミンガム市響のシェフとして実績を重ね、2026/27シーズンからベルリン・ドイツ響の首席指揮者兼芸術監督に就任し、25年6月のベルリン・フィルデビューでも賞賛を博した“世界のヤマカズ”は、かつて正指揮者を務めた日本フィルとの縁も深く、毎年客演を続けている。むろん最大の魅力は、聴く者を吸引する雄弁な音楽だが、通り一遍ではないプログラムや表現も見逃せない。そうした“素”のヤマカズの真価を身近に味わえるのが日本フィルとの共演のチャーム・ポイントであろう。 今回のプログラムは、ベルリン・フィル客演時と同じく武満徹&フランスもの。最初のドビュッシー「遊戯」は、作曲者最後の管弦楽曲で、円熟の筆による色彩感が聴きものとなる。おつぎは武満の「マイ・ウェイ・オブ・ライフ」。田村隆一の英訳詩を用いたバリトン独唱(加耒徹 2020年に第27回ブラームス国際コンクール声楽部門で日本人初優勝を果たし注目を集めたソプラノの森野美咲。以後、ヨーロッパを拠点に、オペラや歌曲など、多彩なレパートリーで活躍。その豊かに響く声と美しい言葉さばき、洗練された舞台姿で人気を集めている。日本でも今年の9月に藤原歌劇団《ラ・トラヴィアータ》でヴィオレッタを演じ、改めてその実力を示したばかりだ。 今回のリサイタルで聞かせてくれるのはオール・リート(ドイツ歌曲)・プログラム。 ウィーン国立音楽大学修士課程のリート・オラトリオ科を修了し、コンクールでも輝かしい成績を収めていることから見てもわかるように、彼女にとってリートはオペラとともに重要な柱だ。「花、乙女、愛」をテーマに、R.シュトラウスの甘美な作風が存分に発揮された〈献呈〉や〈万霊節〉、可憐な雰囲気に満ちた歌曲集「乙女の花」で幕開け。それに続くのは20世紀ドイツの現役最強の歌唱も心強い)と合唱(東京音楽大学)付きの佳品で、後期作品ならではの柔和な響きが胸に染みる。それにこの曲は武満作品の中でもとりわけドビュッシーの影響を感じさせる音楽だ。後半は、各奏者の妙技が楽しみなラヴェルの「ボレロ」を経て、プーランクの「スターバト・マーテル」へ。後者は、の作曲家、ヘルマン・ロイターの「オフィーリアの3つの歌」だ。詩の世界を鮮やかに浮かび上がらせる彼の手腕が発揮され、オフィーリアの内面が見事に表れた作品である。 そしてピアノ編曲でもおなじみのリスト「愛の夢」はオペラ・アリアにも通じるドラマ性をもつ楽曲。森野の歌唱の幅広さを存分に楽しめることだろう。 “最小の室内楽”であるリートにおいて重要なピアノを演奏するのはこの分野における第一人者、ヘルムート・ドイシリアスかつ濃密な大作で、ソプラノ独唱(気鋭の熊木夕茉)と合唱を交えた妖しい美しさに魅せられる。 これは、ドビュッシーから武満に至る20世紀フランス音楽の系譜を辿る内容であり、その変遷を体感しながら世界の頂点へ向かうマエストロの魅力を感知できる、極めて意義深い公演だ。チュ。 彼の作り出す情景や空気感に乗って、森野が珠玉の名曲をどのように届けてくれるか期待したい。山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団森野美咲(ソプラノ) & ヘルムート・ドイチュ(ピアノ) 至高のドイツ歌曲レジェンドを迎え花ひらく珠玉のリート

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