eぶらあぼ 2025.11月号
54/157

ピョートル・アンデルシェフスキ ©Simon Fowlerハンヌ・リントゥ ©Veikko Kähkönen©Akira Muto第653回 定期演奏会 11/27(木)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp11/2(日)14:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp51ハンヌ・リントゥ(指揮) 読売日本交響楽団北欧のマエストロが描く壮麗な冬の情景舘野 泉 ピアノ・リサイタル 卒寿記念コンサート飽くなき情熱、微笑みとともに文:鈴木淳史文:宮本 明 シベリウスに始まりシベリウスに終わる。 ハンヌ・リントゥと読響との初顔合わせとなるプログラムだ。 リントゥは指揮者王国フィンランドの出身。サロネン、オラモ、ヴァンスカ、インキネン、ロウヴァリ、マケラ同様にシベリウス音楽院のパヌラのもとで学んだ、今もっとも脂が乗りきった実力派指揮者だ。 シベリウスの交響詩としては、知名度の割には、あまり演奏会ではお目にかからない「ポホヨラの娘」で演奏会は始まる。読響の金管セクションの活躍も聴きどころだ。 そして、ピョートル・アンデルシェフスキを迎えてのバルトークのピアノ協奏曲第3番。作曲家が最晩年に書いた、ロマン派への回帰をも思わせる調性感も強い協奏曲から、ポーランドを代表するピアニストは民族的なエッセンスを鮮やかに引き出してくれるのではないか。 後半は、2年前に亡くなったフィンラ 数え年で90歳を迎えた舘野泉(1936年11月生まれ)の卒寿記念コンサート。60代半ばに病で半身麻痺となりながらも、「左手のピアニスト」として復帰した不屈の精神には、ただ敬服するばかりだ。だが音楽ファンは、彼がそれ以前から日本を代表するピアニストとして揺るぎない歩みを重ねてきたことも忘れていない。 北欧の自然を思わせる深く透明な響きと孤高の抒情は唯一無二。だからこそ、国内外の作曲家たちが次々と彼のために左手の作品を寄せ続けてきた。その数はいまや130曲を超えている。今回の演奏曲もすべて舘野のために書かれた作品だ。 アイスランドの作曲家マグヌッソンの「アイスランドの風景」(2013)。舘野が“親友”と呼ぶノルドグレンの「小泉 八 雲 の『 怪 談 』によるバラードII」(2004)。 同じくフィンランドの作曲家ティエンスーの「復活」(2013)。フィンランドは舘野にとって第二の母国でンドの作曲家サーリアホの「冬の空」。凍てついた空気と、重くのし掛かった鉛色の厚い雲を描いたような、北欧の風景が目に浮かぶような音楽だ。 そのランドスケープは、最後に演奏されるシベリウスの交響曲第7番にも繋がっていく。自然の厳しい風景を描いたサーリアホ作品から、それが心のあり、彼の人生に深く根を下ろした場所である。 そして舘野のために最も多くの作品を手がけている作曲家の一人、パブロ・エスカンデの「 奔 放なカプリッチョ」(2023)。ピアノと7本の管楽器のための室内楽作品だ。近年の舘野のコンサートではしばしば室内楽が組み込まれている。そのアンサンブルからはいつも、奏者たちと老巨匠とのあいだの確かな共感と信頼が、目に見えるように立ちのぼってきて胸を衝く。その底流にあるのは、舘野泉という人の大きな「人間力」にほかならない。なかに入り込んだようなシベリウス作品という流れが秀逸。精緻にして情熱的な演奏を期待したい。 ちなみに、このプログラムの後半は、リントゥが昨年ベルリン・フィルにデビューしたときとまったくの同一。いわゆる「勝負プログラム」を携えて読響の指揮台に立つ。

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る