Vol.35 福井県立三国高等学校吹奏楽部「ジャズやろっさ!」本気でJAZZする北陸の吹奏楽部取材・文・写真:オザワ部長(吹奏楽作家) 福井県立三国高校吹奏楽部の今年度の部長で、アルトサックスを担当する藤井玲(3年)は、以前は教室の隅にちょこんとおとなしく座っている生徒だった。 人前でもうまく話せず、自分に自信がない。「変わりたい、違う自分になりたい」という思いを持ちながらも、なかなか一歩を踏み出せずにいた。 そんな玲を変えてくれたのが、三国高校吹奏楽部と「ジャズ」だった。 東尋坊や越前がにで有名な坂井市三国町にある三国高校。吹奏楽部は現在、吹奏楽とジャズの「二刀流」で活動している。特に、ジャズに力を入れていることで全国的に知名度を上げつつある。 吹奏楽部の定期演奏会というと、クラシックとポップスを一連のプログラムの中で演奏することが多いが、三国高校は春にジャズだけの「SANKO JAZZ」、秋には吹奏楽だけの「SANKO BRASS」を開催している(「三高(さんこう)」は三国高校の地元での通称)。 二刀流の道を歩み始めたのは、2021年に顧問の武井晋(しん)先生が着任してからだ。38♪♪♪ 三国高校の卒業生であり、地元の敬勝寺の住職という顔も持つ武井先生は大学時代にジャズに目覚め、サックス片手にアメリカに渡った経歴を持つ。帰国後、南越前町の小学校に勤務し、ジャズバンド結成。異動先の坂井市の三国中学校、春江中学校では吹奏楽部を指導。三国中学校では全日本吹奏楽コンクールに2度出場を果たした。 そんな武井先生だが、三国高校に赴任した際には定期演奏会前に部員が1、2年生のみ17人しかいなかった。同校卒業生でナレーターとして活躍する岡田健志に相談したところ、「ジャズならできるでしょ」とアドバイスされた。 確かに、ジャズのビッグバンドは17人前後で演奏される。武井先生もジャズは得意だ。しかも、福井
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