eぶらあぼ 2024.6月号
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7/6(土)15:00 東京文化会館問 NBSチケットセンター03-3791-8888 https://www.nbs.or.jp37NBS 旬の名歌手シリーズ - Xソンドラ・ラドヴァノフスキー(ソプラノ) & ブライアン・ジェイド(テノール)オペラ・デュオ・コンサート■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 声の威力と魔力に観客が圧倒され続ける、衝撃的なコンサートが実現する。 ソンドラ・ラドヴァノフスキーは強靭な声と柔軟な表現で、《ノルマ》などベルカントの歌唱に生命を吹き込んできた。それはMETの映像でもおなじみだが、筆者は昨年、イタリアで彼女の歌唱に打ちのめされ、スケールも質も想像を絶していたと思い知らされた。 《マクベス》のマクベス夫人では、力強いコロラトゥーラを難なくこなすばかりか、稀代の悪女の複雑な心の動きを、声色だけで完璧に掘り下げた。豊麗な声で圧するように歌われがちな《トゥーランドット》の表題役も、彼女は強弱の幅を大きくとって明暗を自在に変化させ、この複雑な女性の狂気も、虚勢も、繊細さも、ニュアンスたっぷりに描ききった。 それは奇跡のような歌唱だったが、そんな彼女がこれまた奇跡的な歌手と共演する。特にポストコロナにおいて、世界の主要歌劇場で熱狂を呼び起こし続予定されていたが、コロナでキャンセルになってしまったため、実に7年ぶり、待望の共演だ。 プログラムはこちらもうれしいオール・チェコもの。まずはスメタナの《リブシェ》序曲。金管の堂々としたファンファーレで、今年生誕200年を迎えるこの作曲家のアニバーサリーを寿ぐ。続いてヤナーチェクの歌劇《利口な女狐の物語》より、フルシャ自身が編んだ大組曲(日本初演)。彼はヤナーチェクが長く暮らしたブルノ生まれ。この作曲家の音楽語法は同地の言葉や音楽の影響を深く受けていると言われるから、その精神をフルシャ以上に理解できる指揮者はいないだろう。そしてド【定期演奏会1000回記念シリーズ⑦】第1002回 定期演奏会Cシリーズ 6/28(金) 都響スペシャル 6/29(土)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jpソンドラ・ラドヴァノフスキー photo:Michael Cooperけているブライアン・ジェイドだ。彼こそは「絶滅危惧種」の真正ドラマティックテノールで、光沢がある甘い声を少しも力まずに張り上げ、輝かしい響きを作りながら、弱音へと自然に落とす。その際、表現されるのはラドヴァノフスキーと同様の無限のニュアンスで、ジェイドが歌うと、劇的なアリアが力強さはそのヤクブ・フルシャ ©Marian Lenhardヴォルザークからは彼の出世作となった交響曲第3番だ。ブライアン・ジェイド photo:Simon Paulyままに、思いのほか表情豊かな曲であったと知らされる。 デュオ・コンサートで歌われるのは、《運命の力》や《オテロ》から《トゥーランドット》《アンドレア・シェニエ》まで、奇跡の2人がいま一番輝く7つの愛の物語。これ以上の声の饗宴は想像がつかない。文:江藤光紀文:香原斗志ヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ヤクブ・フルシャは40代前半とまだ若いが、大指揮者への階段を着実に上っているようだ。チェコ・フィルやフランス放送フィルのアソシエート・コンダクターからスタートし、プラハ・フィルの音楽監督、都響の首席客演指揮者を務めた。現在はノットの後を継いでバンベルク響の首席指揮者、フィルハーモニア管、チェコ・フィルの首席客演指揮者のポストにある。さらに、20年以上の長期にわたりパッパーノが率いてきた英ロイヤル・オペラ・ハウスでの仕事もスタートし、2025/26シーズンからは音楽監督に就任。いよいよ世界屈指の名門歌劇場を率いることになる。端正で落ち着いた音楽は大人の魅力を湛え、当初から高い評価を得ていたが、熟成は一段と深まっているようだ。 さて、そんなフルシャが2017年度の首席客演指揮者退任後、初めて都響の指揮台に帰ってくる。20年にも出演が

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