eぶらあぼ 2024.6月号
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♪♪♪拡大版はぶらあぼONLINEで!→35 ほかにも、ミーティングのたびに東寺に向かって合掌したり、定期演奏会の最後に全員揃って素早く脚を動かす「ぴお」をやったり、東寺の献米法要では「いろは歌」に基づいた曲を演奏をしながら境内を行進したりする。また、琴や篠笛、尺八など和楽器の演奏にも取り組んでいる。「関西大会を勝ち抜くためには、タテ(音の出だし)を揃えるのはもちろん、やっぱり音量も必要だと思っています。人数の少ない洛南が、55人(コンクールの参加上限人数)で出場してくるライバル校に対抗するために、一人ひとりの音量や全体の響きを強化したいと思っています」 そう語るのは3年生のコンサートマスターでオーボエ担当の渡會(わたらい)美羽だ。 洛南高校の部員たちにとっては、演奏だけでな「ぴお」 そんなユニークな吹奏楽部に入った絢子はこれまで関西代表への返り咲き、すなわち全国大会出場を目指して活動を続けてきた。「去年は関西大会銀賞ですごく悔しかったです。他校に比べると洛南は例年部員数が少なく、今年度も44名。そのせいか、演奏の迫力が足りないと言われることもあります。でも、根性論になってしまうかもしれませんが、全員が全国大会出場を強く願う気持ちがあれば、それが音に反映されて迫力にもつながるかなと思っています」 悪しき根性論ではなく、人の心を揺さぶる音楽のための「良き根性論」は、きっと洛南の力になることだろう。 そして、部員たちの持つ知性も大きな武器だ。「普段の練習で『こうやって演奏してみたら』と提案したとき、予想もしない角度から別の意見がどんどん出てくるので、『あぁ、みんな賢いな』と思いますね。手ごわさと頼もしさを感じます(笑)」く、部活と勉強の両立も大きな課題だ。美羽は場所によってそのスイッチを切り替えているという。「学校は部活をする場所、部活の後に行く自習室は勉強をする場所、と決めています。家はご飯を食べて寝る場所です(笑)」 クラリネット担当の3年生、加地春樹は国公立大学の医学部への進学を目指しているが、美羽と同様、場所によってメリハリをつけていると語る。左より:部長の内藤絢子さん、渡會美羽さん、加地春樹さん、2年生でトランペットの古沢玲衣さん「部室にいるときは部活に集中しますが、教室にいるときは勉強モード。できる限り授業中に知識を吸収するようにしています」 過去の先輩たちは部活に燃えながらも難関大学に進学し、両立が可能であることを示してくれた。 部長の絢子はこう語る。「吹奏楽を頑張るからといって勉強がおろそかになったり、その逆になったりするのはイヤやなと思っています。どちらにも全力を注ぐ吹奏楽部でありたいですし、その上で今年こそは絶対に全国大会に出場したいです」 磨き上げた演奏と「洛南ファイト」の声を全国大会で響かせよう――。 そう心に誓いながら練習を続ける部員たちを、五重塔が静かに見守っている。

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