eぶらあぼ 2024.6月号
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CDCDCDSACD新世代ギタリストのトップを走る朴の、デビュー14年目にして初のオール・バッハ・アルバム。完璧なテクニックと美しい音色はもとより、流麗なフレージングや自然な呼吸感、緻密な構築力に感心させられる演奏だ。彼女の特長でもあるギターらしからぬスムーズな運びと、ギターならではの音質的な妙味を兼ね備えている点が、実に魅力的。特に「前奏曲、フーガとアレグロ」の速い動きや、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番のオリジナルとは異なる新鮮さに魅せられるし、「シャコンヌ」の抑揚や構成も見事だ。ナチュラルなバッハ音楽として万人が楽しめる1枚。 (柴田克彦)林光の訳詞によるドイツ歌曲集。オペラシアターこんにゃく座で、長年彼と活動を共にしてきた竹田恵子の歌と井口真由子のピアノ。訳詞だから当然原語とは違うが、数多くのオペラや声楽曲を手掛けている林らしく、日本語がごく自然に、旋律とよく馴染む。竹田は林の意図を巧く掬い取る。例えばシューベルトの〈魔王〉は、父、子、魔王の歌い分けの言葉と歌がぴったりで、原曲さながらの迫力で迫ってくる。〈水の上でうたう〉も自在な詞と歌。ピアノもきれい。〈小川の子守歌〉で“眠れ安らかに”の語りかけは、やがて静かな祈りとなる。〈春の夢〉の夢と現実の間の世界の激変。それでも夢みたい。(横原千史)権田晃朗は桐朋学園大学院大学修士課程を修了したピアニスト。学生時代より複数のコンクールで優勝や上位入賞を重ね、精力的な演奏活動を行っている。本盤には「癒し」をテーマに選ばれたオール・ショパン・プログラムを収録。昨今の厳しい世界情勢の現実から離れ、ショパンの音色に満たされてほしいという願いが込められている。「癒し」といっても小品集では終わっておらず、夜想曲にワルツ、バラードにソナタと多彩かつ重厚な選曲で一つの世界観を構築。ただ優しく語りかけるのではなく、ショパンの音楽の魅力を美しい音色によって届けることで癒しを与えてくれる。(長井進之介)加藤訓子のライヒ作品集第2弾は初期から比較的近作まで4作を集めた。全編、加藤の多重録音で妥協のない完成度を誇る。「フォー・オルガンズ」の一つの和音から様々な表情を引き出すプロセス、「ピアノ・フェイズ」(2台のヴィブラフォン編曲版)のズレからくるキラキラとした輝き、反復が生む催眠効果――シンプルなアイディアが身体化されていく様にマジカルなオーラが漂う。「ナゴヤ・マリンバ」「マレット・クァルテット」ではテクスチュアがより複雑になり、緩急緩といった構造も生まれ、聴き手は絡まりあう旋律の綾と心地よいパルスに身を任せながら万華鏡のような世界を通過していく。(江藤光紀)120J.S.バッハ:前奏曲 フーガとアレグロ、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「シャコンヌ」朴葵姫(ギター)モーツァルト:春へのあこがれ、すみれ/シューベルト:ます、魔王、水の上でうたう、歌曲集「美しき水車小屋の娘」より〈小川の子守歌〉、歌曲集「冬の旅」より〈春の夢〉/シューマン:歌曲集「詩人の恋」より〈美しい五月〉 他竹田恵子(うた)井口真由子(ピアノ)ショパン:3つのノクターン、3つのワルツ「華麗なる円舞曲」、バラード第4番、即興曲第3番、子守歌、ピアノ・ソナタ第3番、幻想即興曲、ノクターン第2番権田晃朗(ピアノ)スティーヴ・ライヒ:フォー・オルガンズ、ピアノ・フェイズ(加藤訓子編/2台のヴィブラフォン版)、ナゴヤ・マリンバ、マレット・クァルテット加藤訓子(マリンバ/ヴィブラフォン/オルガン/マラカス)Linn Records/ナクソス・ジャパンCKD712 ¥3490(税込)日本コロムビアCOCQ-85624 ¥3500(税込)コジマ録音ALCD-7294 ¥3300(税込)ナミ・レコードWWCC-8009 ¥3300(税込)竹田恵子 ドイツ歌曲をうたう―林光の訳による―権田晃朗 ピアノリサイタル〜癒やしのショパン〜BACH/朴■■■■■■葵姫kuniko plays reich II/加藤訓子

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