eぶらあぼ 2024.6月号
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第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール・ライヴ/エリック・グオCDCDSACDCDオクサーナ・プレイズ・バンドゥーラ/オクサーナ・ステパニュックラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第1番&第2番 他/大嶺未来&高橋多佳子ジョン・ウィリアムズの映画音楽は、もはや20世紀(と21世紀)の古典だ。ドイツ・グラモフォンから作曲者指揮のサイトウ・キネン・オーケストラの演奏でこうしてリリースされる。『スーパーマン』『ハリー・ポッター』シリーズ、もちろん『スター・ウォーズ』…。オーケストラは限りなく真摯にスコアに献身し、現代の交響楽レパートリーとしての古典的威容をあますところなく伝える。そしてこの演奏はウィリアムズを日本に呼んだ盟友・小澤征爾へのエールでもあった。小澤に捧げた「Tributes!(for Seiji)」がドゥネーヴ指揮で躍動的に弾ける。前島秀国氏の水も漏らさぬライナーノーツも必読。(矢澤孝樹)昨年10月にワルシャワで開催された第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで、第1位およびマズルカ賞に輝いたカナダの俊英エリック・グオのコンクール・ライブ演奏を収めたアルバム。ファイナルでのピアノ協奏曲第1番、2ndステージでの3つのマズルカop.59、そしてワルツ変イ長調op.42を収録。グオは1842年製のプレイエルを用い、協奏曲では瑞々しくも確信に満ちた音色を引き出し、マズルカではリズムの機微を伝えながら丁寧に表情を乗せている。ピリオド楽器の経験はなかったと語るグオの優勝理由を、しかと耳で感じさせてくれる一枚。    (飯田有抄)キーウ出身のソプラノ歌手で、ウクライナの伝統楽器バンドゥーラの名手による弾き語りアルバム。2017年から日本オペラ協会に所属して精力的に活動を続ける彼女はコロラトゥーラを得意としつつ、その持ち味は幅広い。本作でもS.バシュタンを筆頭に自国の作曲家による作品や民謡はもちろんのこと、ギターとチェンバロを合わせたようなエキゾティックで気品のあるバンドゥーラの響きにのせて歌われる〈カッチーニのアヴェ・マリア〉や〈私を泣かせてください〉なども絶品。特に祖国への想いを込めて日本語で(最後はドラマティックに)紡ぐ岡野貞一〈故郷〉に心掴まれるはずだ。 (東端哲也)ラフマニノフ生誕150年だった昨年、出色のピアノデュオ公演の記録。この作曲家をライフワークとする大嶺未来とロシアものに定評のある高橋多佳子が、デュオの一つの理想形とさえ思わせる演奏を実現。個人技やひらめきを強調してフォルムやバランスを崩すような場面は皆無。常設デュオのように精密にして自然体のアンサンブル、練り上げられた響き、きらめくような美音、柔和かつ豊潤なソノリティ。著名な第2組曲の安定感とグルーヴ感は見事だし、若書きの第1組曲の深淵と幻想性には陶然。ひたすらにラフマニノフに奉仕する名手たちの思いが、最高の形で結実。 (林 昌英)118ジョン・ウィリアムズ:映画『スーパーマン』より「スーパーマン・マーチ」、映画『ハリー・ポッターと賢者の石』より「ヘドウィグのテーマ」、映画『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』より「ヨーダのテーマ」「帝国のマーチ」、Tributes!(for Seiji) 他ジョン・ウィリアムズ ステファン・ドゥネーヴ(以上指揮)サイトウ・キネン・オーケストラユニバーサル ミュージックUCCG-45092 ¥3080(税込)ショパン:ピアノ協奏曲第1番、3つのマズルカ op.59、ワルツ op.42エリック・グオ(ピリオド・ピアノ)ヴァーツラフ・ルクス(指揮){oh!}オルキェストラ・ヒストリチナバシュタン:船/シャモ:カッコウ/ウクライナ民謡:深い井戸/ヴァヴィロフ:カッチーニのアヴェ・マリア/ヘンデル:歌劇《リナルド》より〈私を泣かせてください〉/岡野貞一:故郷/ヴェルビツキー:ウクライナ国歌 他オクサーナ・ステパニュック(ソプラノ/バンドゥーラ)ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第1番「幻想的絵画」、同第2番、前奏曲「鐘」(2台ピアノ版)/チャイコフスキー(ラフマニノフ編):バレエ音楽「眠れる森の美女」組曲大嶺未来 高橋多佳子(以上ピアノ)収録:2023年10月、ワルシャワ(ライブ)NIFC/東京エムプラスXNIFCCD660 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCL-00836 ¥3850(税込)収録:2023年10月、東京文化会館(小)(ライブ)妙音舎MYCL-00051 ¥3300(税込)John Williams in Tokyo/ジョン・ウィリアムズ&サイトウ・キネン・オーケストラ

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