eぶらあぼ 2024.6月号
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SACDCDCDスクリャービン&スカルラッティ:ピアノ作品集スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番、前奏曲 op.11-6,14,20、同 op.16-1,4、練習曲 op.8-11/スカルラッティ:ピアノ・ソナタ K.56,K.58,K.87,K.238,K.466,K.544/ユリウス・アザル:TRANSITION I,II 他ユリウス・アザル(ピアノ)CDイタリアンソング with 加耒徹モーツァルト:ソナタ・プロジェクト―ザルツブルク/ユンディヴィヴァルディ:四季、海の嵐 他/新イタリア合奏団&フェデリコ・グリエルモ&工藤重典ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」、フルート協奏曲「海の嵐」、同「ごしきひわ」、トリオ・ソナタ「ラ・フォリア」新イタリア合奏団フェデリコ・グリエルモ(ヴァイオリン)工藤重典(フルート)/ユリウス・アザル/プロムジカ使節団ショパン・コンクール優勝以降、中国のピアノ界をリードしたユンディ。近年は演奏活動が滞り気味だったが、この新譜で復活を告げる。しかも、彼にとっては初めてのモーツァルト・アルバム。持ち前の明快にして小細工なしのスマートな語り口がより前面に出た演奏だ。長調から短調へ転じたときの、さあっと冷たい空気が抜けるような清涼感。さりげない音色の変化などに、ユンディならではのピアニズムの美学を感じる。流れの良さは健在だが、かつてのようなスポーティさは影を潜め、作品により真摯に取り組んでいることに、その成長ぶりもうかがえるのではないか。(鈴木淳史)フェデリコ・グリエルモと新イタリア合奏団による「四季」。速めのテンポでリズムの切れ味鋭く、音楽が前へ前へと進んでゆく様は、爽やかで快い。ヴィヴァルディの聞き古されたかのような名作に、新しい風が吹いてくる。グリエルモの独奏は、緩急自在。特に緩徐楽章で大胆なほど新しい装飾音を付け加える。通奏低音はチェンバロではなく、テオルボを使っているので、弦の響きの純度が増し、また独特の響きを楽しめる。フルート協奏曲での工藤重典は、技巧的なパッセージを楽々と吹きこなし、軽やかで煌めいた音色が典雅。刺激的で楽しいヴィヴァルディ・アルバムだ。(横原千史)フランクフルト出身のユリウス・アザルは1997年生まれ。本作はグラモフォンからのデビュー盤で、スカルラッティとスクリャービンの作品集である。イタリア・バロックとロシア後期ロマン派という、時代も国も様式もかけ離れた2人の作曲家のソナタを結ぶコンセプトもさることながら、全体に非常に繊細な音色で編み込まれ、一貫して独特の抒情性を滲ませる表現力にも驚かされる。予備知識なく聴いても、新星のクリエイティヴィティに心掴まれるが、アザルが映画『インセプション』に触発されていることを明かす前島秀国氏のライナーノーツの内容にも注目だ。 (飯田有抄)気鋭の古楽集団「プロムジカ使節団」のデビュー盤。「ソング」と軽やかだがモンテヴェルディ、カッチーニら初期イタリア・バロックの、濃厚な情念を表出する歌曲が主役だ。バッハ・コレギウム・ジャパンなどで活躍する加耒徹の、明晰で力強い歌声が響く。さらに同時代のフレスコバルディから18世紀のD.スカルラッティに至るオルガン、チェンバロ独奏曲が挟まれる。器楽が人間の声を規範に発展し始めた時代の音楽を、歌心溢れる名手たちが彩色する。おっと、英国ダウラントのリュート曲と歌曲もゲスト参加だ。まさに歌の饗宴。あえて曲目解説を掲載しないのは「音楽で勝負」の心意気か。(矢澤孝樹)116モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」、同第8番、同第14番、幻想曲 K.475ユンディ(ピアノ)モンテヴェルディ:苦しみはかくも甘い/ダウラント:What if a day、流れよ 私の涙/カッチーニ:かくも甘き吐息よ/フレスコバルディ:書簡の朗読の後のカンツォーナ/D.スカルラッティ:ソナタ K.175 他プロムジカ使節団【圓谷俊貴(オルガン/チェンバロ) 佐藤亜紀子(リュート/テオルボ) 伊藤美恵(バロックハープ) 蔡怜雄(パーカッション)】加耒徹(バリトン)ナミ・レコードWWCC-8010 ¥3300(税込)ワーナーミュージック・ジャパンWPCS-13850 ¥3300(税込)収録:2022年11月、紀尾井ホール(ライブ) 他マイスター・ミュージックMM-4529 ¥3520(税込)ユニバーサル ミュージックUCCG-45095 ¥3080(税込)

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