eぶらあぼ 2024.3月号
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第8回仙台国際音楽コンクール ピアノ部門優勝/ルゥォ・ジャチンCDCDCDCD116マーラー:交響曲第4番/佐渡裕&トーンキュンストラー管ラロ 管弦楽作品集/ネーメ・ヤルヴィ&エストニア国立響3人の鬼才が集った強烈なアルバム。コンセプト云々よりも、コパチンスカヤの怪物的パフォーマンスに唖然、他の2人も劣らぬ怪人ぶり。プーランク「城への招待」の楽曲が“プロムナード”となって、バルトークやプーランクらの作品をつないでいく構成だが、どの曲も気楽さと無縁、奇怪な奏法や声も駆使し、目の回るような展開でこってりした演奏が連続する。この編成の代表作「コントラスツ」さえ初めて聴く曲のよう。最後の「クレズマー・ダンス」の異様な狂騒ぶりにはもはや恐怖心さえ。新しい体験を求める人には痛快、そうでない人も耳が離せなくなること請け合い。 (林 昌英)佐渡裕のマーラーは、師匠のバーンスタイン譲りの表情の濃さと独特のうねりがあり、今作品が生まれたかのような、生き生きとした躍動感がある。トーンキュンストラー管の響きはまろやかでウィーンの香りがあり、マーラーにぴったり。冒頭の2つの主題から弦が優雅で美しい。細かい表情の作り方に自発性があり、実に雄弁。スケルツォの死神のアイロニーとトリオの対比も鮮やかだ。緩徐楽章のチェロとヴァイオリンの対話も極上の美しさ。終楽章はザハリアの透明な声と清潔なイントネーションがとてもきれい。佐渡とトーンキュンストラー管の絶妙なコンビが生んだ極めて美しいマーラーである。(横原千史)ユジャ・ワンに成田達輝など、世界的に活躍するアーティストを輩出してきた仙台国際音楽コンクール。本盤は、その第8回(2022年)のピアノ部門優勝者であるルゥォ・ジャチンの優勝記念アルバムとなっている。現在ニューイングランド音楽院でダン・タイ・ソンに師事する彼の音色は透明感がありながらも多彩に変化し、楽曲の魅力を鮮やかに届けてくれる。フォーレの「ヴァルス・カプリス」における軽やかさをはじめ、スクリャービンのピアノ・ソナタ第7番「白ミサ」やシューマンのピアノ・ソナタ第1番における重厚な音づくりや構築力など、彼の魅力を存分に味わえる一枚だ。(長井進之介)ラロの作品といえば、どうしても「スペイン交響曲」だけが目立つ。しかし、それ以外だって魅力があると主張せんばかりに編まれた管弦楽曲集だ。それは、86歳を迎えてもまったくその開拓精神を失わない指揮者、いかにもネーメ・ヤルヴィらしいアルバムでもある。劇的な起伏が印象的な《イスの王》序曲に、ドビュッシーも賞賛したバレエ作品による隠れた傑作「ナムナ」組曲。そして、サン=サーンスやフランク作品よりもキャッチーな派手さはないが、機知に富んで色彩感も独特な交響曲。それらの作品をエストニア国立響は明晰なリズム、そして太い線を用いて堂々と奏でている。(鈴木淳史)収録:2022年4月、ウィーン(ライブ)エイベックス・クラシックスAVCL-84156 ¥2200(税込)フォンテックFOCD9888 ¥2640(税込)プーランク:「城への招待」より/シェーンフィールド:クラリネット ヴァイオリン ピアノのための三重奏曲/バルトーク:ヴァイオリン クラリネット ピアノのためのコントラスツ/ニキフォル:クレズマー・ダンス 他パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン) レト・ビエリ(クラリネット)ポリーナ・レシチェンコ(ピアノ) 他Alpha/ナクソス・ジャパンNYCX-10446 ¥3300(税込)マーラー:交響曲第4番佐渡裕(指揮)トーンキュンストラー管弦楽団アデーラ・ザハリア(ソプラノ)フォーレ:ヴァルス・カプリス第1番、ノクターン第6番/スクリャービン:ピアノ・ソナタ第7番「白ミサ」/シューマン:ピアノ・ソナタ第1番/シュルツ=エヴラー:ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」によるアラベスクルゥォ・ジャチン(ピアノ)ラロ:《イスの王》序曲、バレエ「ナムナ」より〈たばこのワルツ〉、同バレエより組曲第1番、同第2番、交響曲 ト短調―わが友シャルル・ラムルーへネーメ・ヤルヴィ(指揮)エストニア国立交響楽団Chandos/東京エムプラスXCHAN-20183 ¥3300(税込)Take 3/パトリツィア・コパチンスカヤ&レト・ビエリ&ポリーナ・レシチェンコ

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