eぶらあぼ 2024.1月号
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第367回 定期演奏会 2/2(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp7/7(日)14:00 サントリーホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp第20回 イマジン七夕コンサート アンリ・バルダ ピアノ・リサイタル「特別な熟成」を重ねた名匠のショパンを七夕に 1941年にエジプトのカイロで生まれたフランス人ピアニスト、アンリ・バルダが2024年も日本にやってくる。7月7日、コンサートイマジン恒例のサントリーホール「七夕コンサート」はオーケストラと多彩なソリストの共演で知られるが、今回はあえてバルダの一人舞台とし、長く傾倒してきたショパンの至芸をたっぷりと味わう趣向。  多くのピアニストと同じく、バルダもショパンをレパートリーの柱に据えてきた。1984年に録音したソナタ全3曲を収めたディスク(仏カリオペ)はショパンの母国、ポーランドでも国際的な賞を授かった。だが、バルダのユニークなショパン体験はアメリカ出身の振付家ジェローム・ロビンズ(1918~98)と組み、10年以上にわたりパリ・オペラ座ガルニエ宮のバレエダンサーのための編曲と演奏に携わり、ツアーにも同行した部分にある。バルダのピアニズム自体、ガッチリした上半身の安も引き継がれるだろうが、今回はヴァイオリンという楽器の特性をどう引き出してくるのかにも注目したい。 またプログラミングも粋だ。ロッシーニ《チェネレントラ》序曲で始まり、菅野作品の初演の後、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(オルガン独奏:石丸由佳)につなぐ。軽やか定と鍵盤の上を自在に移動する手指の柔軟性を通じてピアノの金属臭が最小限に抑えられ、ごく自然な肌触りのエコロジカルな音の数々が生き物のようにうごめく。踊りとの相性も抜群のはずだ。  2024年の「七夕コンサート」では第3楽章の「葬送行進曲」が有名なピアノ・ソナタ第2番のほか、「舟歌」「幻想曲」など優雅で深淵、時にロマンティックな波動のある名曲の数々を弾く。バルダが描くショパンのサロンは貴婦人たちの集いではなく、サティやコクトーらが出入りした裏通りのカ藤岡幸夫 ©青柳 聡神尾真由子 ©Makoto Kamiyaフェ、一癖も二癖もある芸術家たちの溜まり場みたいな空間であり、私たちもその「妖しげな匂い」に魅了されずにはいられない。©Jean-Baptiste Millot文:江藤光紀文:池田卓夫石丸由佳なメロディーが軽快に弾むロッシーニの序曲、フランスの交響曲運動の中核的役割を担ったサン=サーンスの代表作に菅野作品を挟むというアイディアもしゃれているが、歴史上の傑作と肩を並べる新作の充実度とエンターテインメント性を示そうとする意図もあるはずだ。61藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団劇伴音楽の匠による新作を世界初演 藤岡幸夫は吉松隆作品を積極的に紹介するなど、「分かりやすく面白い同時代の音楽」の開拓に並々ならぬ意欲で取り組んできた指揮者。その藤岡が近年ほれ込んでいるのが菅野祐悟だ。テレビドラマに映画に、とその界隈では長年第一線で活躍、知らないものがいない才能だったが、もともとクラシックやライブでのコンサートに関心があった菅野に藤岡が交響曲の作曲を勧め、初演にこぎつけたのが2016年のこと。その後、膨大な量の劇伴をこなしつつ、交響曲第2番をはじめ、サクソフォン(初演:須川展也)、チェロ(初演:宮田大)の協奏曲といった大作を次々に発表、いずれも好評をもって迎えられている。 その菅野が新たに手掛けたのはヴァイオリン協奏曲だ。ソリストは世界で活躍する神尾真由子。耳につく旋律、聴き手の心を揺さぶる管弦楽法など、これまでの菅野作品の美質は本作に

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