eぶらあぼ 2024.1月号
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Interview脇園 彩(メゾソプラノ) & 小堀勇介(テノール) & 園田隆一郎(ピアノ)名手たちが紡ぐ比類なきベルカントの世界 ニューイヤーに贈る、ベルカントの傑作ばかりを集めたデュオリサイタル。イタリアを中心にヨーロッパで活躍するメゾソプラノの脇園彩、甘美な歌声と卓越した歌唱技術で魅了するテノールの小堀勇介、そして指揮者として幅広いレパートリーを持ちながらロッシーニをライフワークにしている園田隆一郎がピアノを演奏する。 ロッシーニは有名な《セビリアの理髪師》などのオペラ・ブッファだけでなく、内容がドラマティックで技巧的にも難しいオペラ・セリアの傑作を数多く書いている。今回のリサイタルではそのロッシーニのセリアの代表作や、その流れを汲むドニゼッティなど、聴きごたえたっぷりのアリアやデュエットが披露される。小堀「オペラ界で今、一番ホットなジャンルはロッシーニだと思います。脇園さんは、そのロッシーニのオペラを歌って世界の中心で輝いているアーティスト。それは彼女のテクニック、声の美しさ、演劇的な表現、そして作品を理解して表現する力があるから。すべてを兼ね備えた人だと思っています。共演できるのは光栄です。 彼女と歌っている時に好きなのは、目から音楽が出ているところ。二重唱の時など彼女の目を見ていると、その人物が次のフレーズをどういう心理で脇園 彩 ©Studio Amati Bacciardi歌うのかがすごく良く分かるんです」脇園「このデュオリサイタルの企画が生まれたきっかけは、23年1月に今回と同じ浜離宮朝日ホールで開催された小堀さんのコンサートでした。昼の11時半という早い始まりだったのに、プログラムを見たら難曲のオンパレード。『どういう人なんだ!』と思いました(笑)。小堀さんのことは昔からよく知っていて、人間としての優しさや包容力があるところが大好きですし、素晴らしい歌い手だと知ってはいたけれど、このリサイタルを聴いて芸術家としての音楽に対するまっすぐな姿勢に本当に感動したんです。終わった後、楽屋に行って、『また一緒に音楽をやりたいね!』と。周りの皆さんも協力してくださり、このリサイタルが決まりました」 今回のプログラムは演奏が難しいゆえに聴く機会が少ない名曲が揃っている。ロッシーニのオペラ・セリア《アルミーダ》《湖上の美人》《ランスへの旅》《オテッロ》、そして最後に演奏される《エルミオーネ》はヒロインの激しさが圧倒的な二重唱だ。脇園は今後、ヨーロッパで歌う予定があるドニゼッティの《ロベルト・デヴリュー》《マリア・脇園 彩 & 小堀勇介 ニューイヤー・デュオリサイタル with 園田隆一郎1/9(火)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/小堀勇介 ©T.Tairadate園田隆一郎 ©Fabio Parenzanストゥアルダ》からのアリアも披露する。特に《マリア・ストゥアルダ》は通常メゾが歌うエリザベス女王役ではなく、19世紀の歌姫マリブランが歌った版でストゥアルダ役に挑戦する。 小堀はドニゼッティの《ラ・ファヴォリート》(フランス語版)や、11月に全曲を歌ったばかりのロッシーニ《オテッロ》からロドリーゴのアリア。報われない愛の嘆きを明るいアップテンポで描くというロッシーニならではの音楽だ。 ピアノは二人が「ベルカントのイタリア・オペラを指揮するなら園田さん」と口を揃える園田隆一郎。園田「私より若い二人、でも何事にも果敢に挑戦して、すごく高いところを目指している彼らを尊敬しています。僕がこういう音楽だなと感じて演奏すると、一緒になって彼らの音楽で応えてくれる。それは作曲家やその音楽を最大限に表現したい、という思いで3人が共通しているからだと思うんです。 今回のプログラムは私たちの“今”を伝える内容。コンサートは唯一無二の素晴らしいものになるはずです。どうぞお聴き逃しなく!」取材・文:井内美香51

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