eぶらあぼ 2024.1月号
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Information浜離宮アフタヌーンコンサート成田達輝(ヴァイオリン) & 萩原麻未(ピアノ)デュオ・リサイタル2/22(木)13:30 浜離宮朝日ホール曲目/ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ(遺作)、    ヴァイオリン・ソナタ ト長調、ツィガーヌフランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調■ 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/33取材・文:宮本 明 写真:野口 博 ピアノの萩原麻未とヴァイオリンの成田達輝がデュオで浜離宮朝日ホールのアフタヌーンコンサートに登場する。ともにパリ国立高等音楽院で学んだ二人。ラヴェルの2曲のヴァイオリン・ソナタとツィガーヌ、そしてフランクのソナタというプログラムを選んだ。「演奏家同士の化学反応を一番楽しんでいただけるプログラムです」(成田)ときっぱり。萩原「ラヴェルを弾くんだったら絶対に響きのよいホールでという気持ちがありました。浜離宮の響きが大好きなんです。それでまずラヴェルのト長調のソナタ(第2番)をぜひ入れたいねと、そこが決まりました」成田「存在するレコーディングの中で最上の演奏をしたいというのは演奏家のエゴだとは思うんですけれども、やっぱり一番自信のある……。自信っていう言葉、嫌いなんだよね?」萩原「そうね。あんまり使いたくない(笑)」成田「えーと……一番心のつながりを感じる作品?」萩原「そっちのほうがいい!」成田「曲に近い感覚を持って弾ける曲、相互理解の密度が高い曲を選ぶとしたら、やはりこのラインナップになるのかなというプログラムです」 萩原の師ジャック・ルヴィエと成田の師ジャン=ジャック・カントロフもまたデュオを組み、ラヴェルやフランクの録音は名盤として名高い。そのルヴィエが師事したヴラド・ペルルミュテールはラヴェル本人の薫陶を受けているし、ラヴェルの最初のヴァイオリン・ソナタ(没後に発見された“遺作”)を初演したのはカントロフの師匠筋のジョルジュ・エネスコという連なり。萩原「でもラヴェルについてルヴィエ先生に教えていただいたのはシンプルなことでした。譜面に書いてあること、その奥深くを見ていくこと。ただ、ちょっとでも私の個人的な感情が入ってしまうと、ラヴェルの洗練された美しさから離れてしまうと言われました。先生とカントロフさんの録音にも感銘を受けていたので、少しでもその背中を追いたいと思います」成田「自分たちのルーツをたどる時に、このプログラムはやっぱり外せなかった。だからある意味で個人的なプログラムです。これ以上削れないし、これ以上足せない。ラヴェルの音楽もそうですよね」萩原「ラヴェルのソナタはヴァイオリンとピアノのそれぞれの特性が生きるように書かれていると思うんです。同調しすぎるのではなくて、それぞれがおのずとバランスよく合わさっていくというか。それぞれが違うからこその良さが、とても洗練された形で書かれている。いっぽうのフランクは人間の感情とともにあるかなと思います」成田「フランクは射手座だからね。人間味がある」 成田は占星術マニアだ。成田「あ! 今気づきました。フランクが射手座で麻未さんも射手座。ラヴェルが魚座で僕が魚座です。これはいいプログラムですね(笑)。本当に、ラヴェルは僕自身のような気がするんですよ。すごく近い。彼がなぜそうしたかったのか、よくわかるんです」 公私ともにパートナーの二人。じつは10年前、デュオとしての活動がスタートしたのも浜離宮だった。成田「最初のツアーの2公演目でした。二人はその年の夏に付き合い始めたんです」萩原「そもそも話をするようになったのもデュオがきっかけです。こうして、家族でもありながら共演もできるという関係性はありがたいなと思っています。今回もまた機会をいただいて、感謝ばかりです」成田「わが家ではそれぞれの演奏会が終わると毎回、家でそれをフィードバックし合うのが習慣になっています」萩原「二人をよく知っている方々に聞くと、私たちはキャラクターが全然違うそうで(笑)。それがデュオとしてどんなふうに調和したり、切磋琢磨し合ったりしているのか。たまにぶつかることもあるんですけど、ほどよい距離感が大事なのかなと思っています」成田「10年経って、成田達輝と萩原麻未がどんなデュオに成長しているのか見ていただくのに、一番よいプログラムだと思います!」どんなデュオに成長しているのか見ていただくのに、一番よいプログラムだと思います!

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