eぶらあぼ 2024.1月号
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第111回 「ダンスのための新しい場所」ダンス私塾開講! 今年(2023年)、じつに結婚と出産を経験しつつ「北陸ダンスフェスティバルDX」の準備を進め、成功させた宝栄美希芸術監督。たいしたものである。オレもダンスレクチャーを依頼され金沢を訪れた。美味しいものを満喫し、素晴らしいダンスを堪能した。 会場である金沢市民芸術村は広大な敷地に美しい赤レンガの旧大和紡績倉庫群がリノベーションされ、4つの工房がある。「多様なジャンルのアーティストが格安で24時間利用可能なんですよ!」と説明されたが、運悪く宝塚歌劇団のブラックな超過労働が盛大に報道されている真っ最中だったので「お、おう」と曖昧な返事しかできなかったけれども。 離れた場所にあるパフォーミングスクエアがフェスの会場で、屋外の芝生スペースも使って様々なパフォーマンスがあった。数週間後のヨコハマダンスコレクション(ダンコレ)にも出場して大活躍するダンサーが多数いたり、北陸フェスのレベルの高さを見せていた。 ちょっと驚いたのが「はながっつ」である。彼は緑の衣裳で自らが花となり、「わっはっは」と言いながら1時間踊り続ける、というだけのパフォーマンス。電飾など一応の工夫はしているものの、昼に雹が降った強風の吹きすさぶ寒冷な空気の中、小雨まで降り出した夜の芝生で笑いながら踊り続けている人間を見ていると、こっちのテンションもおかしくなってくる。子どもは一緒に踊り出し、大人は惜しみない手拍子を送り続けていると、(なんだこれ?)と思いながらも熱い何かが芽生えてくるのを感じた。 最後に宝栄芸術監督からは、今回で劇場公演を中心としたフェスは一度終了し、来年からは新しい形のフェスが始まることが告げられた。オレも協力していきたい。 帰京の翌日にオレは東京芸術劇場横の屋外で寒さに震えながら二日間にわたって東京都のヘブンそれでも踊るそれでも踊る者たちのために者たちのためにアーティストの実技審査。三日目には東洋大学の海野敏教授の招きで特別ダンス講義を朝9時から行った。連日の早起きが身体に堪え、オレは二日ほどぶっ倒れたけど復活し、いまはダンコレとYPAM(横浜国際舞台芸術ミーティング)で横浜通いをしている。 で! お伝えしたいのはオレの新プロジェクトである。以前から要望の声が高かった、オンラインでの「ダンス私塾」がついに開講したのだ! CAMPFIREが提供するオンラインコミュニティで、大人数よりも少人数での文化的なコミュニティを応援している。SNSの殺伐とした雰囲気に嫌気が差す昨今、コンテンポラリー・ダンスを自由に語ったり知りたいと思う人はぜひ参加してほしい。オレの40年間の評論家としての知見を共有し、書きたい人のために「書生」も取ることにした。オレが直接添削をするよ(上限7名)。定期的にZoom集会をする予定なので、ダイレクトにオレと話すこともできる。そしてオンラインなので住んでいる場所は関係ない。 ダンスファンはもちろん、ダンサーや制作者、学生、劇場や財団関係者、マスコミや研究者など、ぜひ参加してほしい。オレが現在のペースで仕事を続けられるのは、年齢と体力的にもあと10年ほどだろう。オレの知見の全てをこの私塾に込めていくつもりだ。 「乗越たかおのダンス私塾」で検索してみてくれ。待ってるぞ!Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com128乗越たかお

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