eぶらあぼ 2024.1月号
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CDSACDCDCD武満徹:ギター作品集/荒井一穂オーケストラ・アンサンブル金沢 22年11月定期ライヴ録音全曲ディスティネーション・パリス/ゴーティエ・カピュソン1181976年の結成以来、一時代を築いてきたエマーソン弦楽四重奏団が、惜しまれつつ解散。斬新な発想や解釈を高水準のパフォーマンスで実現し、最先端を走り続けてきて、いまや珍しくないヴァイオリンの交代制も、批判を受けながらも広く定着させたのは彼ら。そんな4人の最後の録音は、シェーンベルクとベルクによる無調の世界を切り拓いた大作と、ヒンデミットとショーソンの美しい佳品、しかもベルク以外はソプラノが加わるという意外な4作。最後まで開拓を続けながら、余裕すらある完熟の名演を作り上げ、盟友の名唱も借りて、“新たな航海”を宣言する。美しき有終。(林 昌英)「フォリオス」冒頭楽章から演奏者の研ぎ澄まされた感性を感じる。フラジオレットが凍てついた冬の夜空の星のように輝く。まるで武満の音感を精密なソナーを使って探り当てていくかのようだ。この曲で予感されていた調性という引力は、「すべては薄明のなかで」をはじめとする後続曲でも働いていて、荒井はその力と戯れながら進んでいく。編曲集「12の歌」になると誰もが知っているヒット曲が思いがけない色使いを施され、洒落た装いで現れる。ここでは武満は原曲を少しずらしているわけだが、それらを訥々と物語る荒井の語り口から、武満がギターという楽器に込めた愛が伝わってきた。(江藤光紀)ヤナーチェクの「弦楽組曲」の前後にモーツァルト晩年のピアノ協奏曲と交響曲を配したプログラムは、「スラブもの」と古典を得意とする同楽団らしい。指揮者を置かず、コンサートマスターの安永徹が室内オーケストラをまとめる演奏スタイルであるが、とりわけ共演歴の長い市野あゆみとのモーツァルト最後のピアノ協奏曲は秀逸な演奏。端正で、一切の虚飾も気負いも感じられない市野のピアノは、オーケストラと独奏の対話を特徴とする同作品の魅力を最大限に引き出している。中でも第2楽章のピアノによる主題は、透徹したピアニズムと相まって、心に沁み入るほど感動的である。(大津 聡)ゴーティエ・カピュソンのパリ賛歌だ。2024年のオリンピックを見据えてのタイムリーな録音。曲目にはドビュッシーやラヴェル等もあるけれど、「オー・シャンゼリゼ」「枯葉」「男と女」「愛のファンタジー」等々、フランスの新旧ポピュラー音楽の名曲満載。ジェローム・デュクロが大部分を編曲し、パリ室内管にピアノに合唱に…と背景をカラフルに変えながら、カピュソンのチェロが響きわたる。豊かな歌と歯切れ良い「語り」で、ラモーからコスマまで時代を超えたひとつながりのパリを描く。ゴールドマンの新曲では世界の分断を超えた希望が歌われる。オリンピックを祝すなら、こうでなくては!(矢澤孝樹)オクタヴィア・レコードOVCL-00825 ¥3850(税込)ヒンデミット:メランコリー/ベルク:弦楽四重奏曲 op.3/ショーソン:終わりなき歌/シェーンベルク:弦楽四重奏曲第2番エマーソン弦楽四重奏団【ユージン・ドラッカー フィリップ・セッツァー(以上ヴァイオリン) ローレンス・ダットン(ヴィオラ) ポール・ワトキンス(チェロ)】バーバラ・ハンニガン(ソプラノ)ベルトラン・シャマユ(ピアノ)Alpha/ナクソス・ジャパンNYCX-10442 ¥3520(税込)武満徹:フォリオス、すべては薄明のなかで―ギターのための4つの小品―、ギターのための小品―シルヴァーノ・ブソッティの60歳の誕生日に―、エキノクス、森のなかで―ギターのための3つの小品―、ギターのための12の歌 他荒井一穂(ギター)モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番、交響曲第40番/ヤナーチェク:弦楽組曲 JW Ⅵ/2 他安永徹(コンサートマスター/ヴァイオリン)市野あゆみ(ピアノ)オーケストラ・アンサンブル金沢収録:2022年11月、石川県立音楽堂(ライブ)ナミ・レコードWWCC-7992-3(2枚組) ¥3300(税込)M.ウィルシュ&M.ディーガン:ウォータールー・ロード(オー・シャンゼリゼ)/J.コスマ:枯葉/ラモー:《優雅なインドの国々》より〈未開人の踊り〉/J-J.ゴールドマン:パンサヌゥ(僕らを想って)/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ (以上J.デュクロ編) 他ゴーティエ・カピュソン(チェロ)ジェローム・デュクロ(ピアノ/チェンバロ) パリ室内管弦楽団 フランス国立放送少年合唱団 他Erato/ワーナーミュージック・ジャパン5419.772146 ¥オープン価格INFINITE VOYAGE―終わりなき航海―/エマーソン弦楽四重奏団

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