eぶらあぼ 2023.7月号
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第752回 東京定期演奏会〈春季〉 7/7(金)19:00、7/8(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp7/5(水)13:30 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp 7月7日&8日の日本フィルハーモニー交響楽団(JPO)・第752回東京定期演奏会は、「フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)」の肩書を持つ広上淳一が、レオンカヴァッロの《道化師》を演奏会形式で上演する。2019年5月の第710回東京定期では、桂冠指揮者兼芸術顧問のアレクサンドル・ラザレフがマスカーニの《カヴァレリア・ルスティカーナ》の大爆演を同じく演奏会形式で成功させており、欧米の歌劇場で「Cav.&Pag.(カヴァパリ)」と呼ばれ、しばしば2本立てで上演されるイタリアのヴェリズモ(現実主義)オペラ2大傑作の輪がコロナ禍をはさんで完結する。 広上は日本フィルや京都市交響楽団、65銀座ぶらっとコンサート #184 西山まりえの歴女楽 Vol.9 〜王妃マルゴ〜美しいフランス音楽とともに王妃が歩んだ波乱万丈の人生を辿る 人類の歴史と同じくらい古くからある楽器ハープは、歴史を物語るのにも適している。その「物語」の導き手が、昔日の音楽の作法に通じた古楽器の名手で、同時にチェンバロ奏者でもあるとしたら…? 王子ホールの「西山まりえの歴女楽」は、平日日中開催ながら他に代えがたい学び豊かな音楽的洗練を体験できる人気シリーズだ。 第9回の主人公は、ルネサンス宗教戦争期のフランス王妃マルグリット・ド・ヴァロワ。ヴェルディやワーグナーが注目され始めた頃に書かれたA.デュマ父の歴史小説『王妃マルゴ』を介し、演劇はもちろん数々の映画や萩尾望都のマンガでも描かれてきた人物だが、なにしろ案内役は一流古楽奏者の西山まりえ。本人の生前に宮廷で知られていた、現代では実演の場が多いとは言えない16世紀末の音楽を次々とりあげてゆく。古楽に関心の高かったフォーレやドビュッシーにも繋がるフラ左より:広上淳一 ©Masaaki Tomitori/笛田博昭/池内 響 ©T.Tairadate/上江隼人/竹多倫子 ©深谷義宣/小堀勇介 ©T.Tairadate緻密なスコアが演奏会形式で再現されると、新たな発見もあるはずだ。 ソリストは「強力」の一語に尽きる。カニオの笛田博昭、シルヴィオの池内響、トニオの上江隼人は23年5月の三河市民オペラ《アンドレア・シェニエ》(ジョルダーノ)でも強靭かつ劇的な歌唱で客席を圧倒。イタリアで頭角を現した竹多倫子のネッダ、ベルカントものの第一人者である小堀勇介のベッペに至るまで隙のないキャストといえる。オーケストラ・アンサンブル金沢などのシェフを歴任。シンフォニー指揮者のイメージが強いが、海外でも若い時から歌劇場のピットで指揮、近年は宮崎国際音楽祭の最終日にイタリア歌劇の傑作を指揮するのが恒例となっている。オーケストラと合唱を駆り立て、ソリストと一体に燃焼する音楽に定評がある。レオンカヴァッロにはワーグナーに傾倒した一面もあり、「ヴェリズモ歌劇の伴奏」という言葉では言い尽くせないほどンス音楽の草創期を、解説付きの古楽器演奏を通じて肌で感じられる機会はきわめて貴重だ。しかも20世紀前半にプーランクが『王妃マルゴ』演劇上演向けに16世紀楽曲を使って仕上げた作品も演目に加え、古楽体験を「点」では終わらせない。西山まりえ ©Naoya Yamaguchi中木健二 ©塩澤秀樹文:池田卓夫文:白沢達生松井亜希 昨年のエリック・ル・サージュとのデュオでも注目されたチェロの中木健二、古楽から近代歌曲まで活躍めざましいソプラノの松井亜希のゲスト参入も頼もしい。銀座で過ごす公演前後の時間も含め、企画の確かさが上質の音楽体験に結びつく初夏のひとときになりそうだ。広上淳一(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団盤石のソリスト陣によるヴェリズモ・オペラの傑作を演奏会形式で

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