eぶらあぼ 2023.7月号
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7/14(金)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp7/13(木)18:30、7/15(土)14:00、7/16(日)14:00、7/17(月・祝)14:00 東京文化会館7/22(土)14:00 びわ湖ホール問 二期会チケットセンター03-3796-1831  びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136(7/22のみ)http://www.nikikai.net ※配役などの詳細は左記ウェブサイトでご確認ください。5959 オペラへの期待は人それぞれ。「美声をただ聴きたい」「豪華な装置や贅沢なドレスを眺めたい」「コーラスが出ると華やか」「知っているメロディが嬉しい」「まわりに『観た!』と自慢しやすい演目が好き」など。どれも頷けるものばかりである。 オペラの名作は、我々の想像以上に親しみやすさを帯びている。その代表格といえば、夜の女王のアリアが知られる《魔笛》(モーツァルト)、〈ハバネラ〉があまりにも有名な《カルメン》(ビゼー)、そして、〈乾杯の歌〉がことに人気の《椿姫》(ヴェルディ)になるだろう。 《椿姫》は実話から生まれたオペラ。19世紀の文人デュマ・フィスが実体験をもとに小説を書き、それを芝居化したら大ヒット。その舞台を観た作曲家ヴェルディがほだされて書き上げた一作である。主人公はパリの高級娼婦ヴィオレッタ。江戸時代の花魁と同じく、特定の客と付き合い、知的な会話もこなせるよう、美貌を磨き教養も積まねばならない職業である。そのヴィオレッタが、純朴青左より:谷原めぐみ/種谷典子 ©Yoshinobu Fukaya/aura.Y2/村上公太/山本耕平/アレクサンダー・ソディー ©Miina Jungいもの、変えてはいけないもの”を気づかされる。 今回はまず、J.S.バッハ「シンフォニア」。ピアノのお稽古の曲集と侮るなかれ。バッハが説く「カンタービレの美しさと知性」が求められる15曲である。そしてブラームス最後のピアノ曲、3つの間奏曲とラプソディから成る枯淡の美を持つ曲集op.119。初期ロマン派の巨匠、シューベルトの天才ぶりが分かるピアノ・ソナタ第7番と「楽興の時」など、石橋節を堪能したい。年アルフレードと恋に落ちたことで人生の歯車が狂う。青年はお金もなく愛情だけ。やがて彼の父親が現れて「息子と別れてくれないと世間体が…」と詰め寄る。こうしたお話では、洋の東西を問わず、主人公は泣く泣く身を引くもの。病魔に侵され余命いくばくもないのに。その哀れさが人を大いに揺さぶるのだ。 今回は、その《椿姫》を東京二期会が3年ぶりに上演。まずは、椿の形をした巨大なセットが面白い。照明の効果で色彩が様々に変化し、場面の趣きや登場人物の心模様をシンボリックに表現してくれる。劇中最も有名なメロディは、先述の通り、主役カップルと合唱団が声を合わせる〈乾杯の歌〉(第1幕)だが、夜会の場なので男女ともそれはドレッシー。「オペラを観た!」と人に言いやすい名場面である。ちなみに、ミュージカルよりも出演者が多いのがオペラのゴージャスさ。第2幕にはダンスとコーラスが絡むシーンもあるから、いっそうの華々しさが味わえるだろう。 続いて、スター歌手の顔ぶれをご紹介。ダブルキャストのソプラノ谷原めぐみと種谷典子(ヴィオレッタ)、テノール村上公太と山本耕平(アルフレード)は、歌の実力に加え、役にふさわしい「若さ」の持ち主でもある。だから今回は、オペラが初めての方にもうってつけ。高い説得力が舞台にもたらされるだろう。また、オペラ通の方には、日本でオペラ指揮デビューとなるアレクサンダー・ソディーにご注目を。欧米ですでに大活躍であり、朗らかでも冷静なこの新星マエストロの腕前もどうぞお楽しみに。文:上田弘子石橋史生 ピアノ・リサイタル揺るぎなく積み重ねてきた誠実な音楽哲学 東京藝術大学大学院、ミュンヘン国立音楽大学で研鑚を積んだ石橋史生は、ドイツを中心にヨーロッパで演奏・教育活動を展開。在欧中に高く評価されていた石橋の音楽哲学は、帰国後、定期的に開催している公演からもひしひしと伝わってくる。選曲構成はクラシック音楽の核から逸脱することなく、演奏スタイルも正統の極み。近年は鋭角なアウトラインに丸みがかかり、それでいて根底には正統な音楽言語がある。素材で勝負の如く混じりっけのない石橋の表現からは、“変わらな東京二期会オペラ 《椿姫》ヴェルディの人気作をビギナーから通まで楽しめるキャストと演出で文:岸 純信(オペラ研究家)

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