第536回日経ミューズサロン ヴァルヴァラ ピアノ・リサイタル若手登竜門の覇者が洒脱な佳品で紡ぐ至福のひととき ヴァルヴァラは、ミハイル・ヴォスクレセンスキーにエフゲニー・コロリオフと、名教師たちの薫陶を受けたピアニスト。2012年にゲザ・アンダ国際ピアノコンクールで優勝し、「魅力的な芸術家にして洗練された音楽家」「詩情溢れる演奏」と絶賛され、世界的な注目を集めるようになった。インバルにジンマン、フェドセーエフなどの名指揮者と協奏曲で共演を重ね、信頼も厚い彼女。現在は多彩なプログラムによるリサイタルの開催や音楽祭への出演に加え、室内楽奏者としても国際的な活 「入門編ではありますが、《魔笛》という作品の持つカラフルな魅力を感じてほしいという思いで作っています」 子どもから大人まで、あらゆる世代が楽しめるオペラ「《まほうのふえ》~パミーナ姫のたんじょうび~」。ぜひフェニーチェ堺を訪れ、実際の舞台を体験してみたい。53Interview菅尾 友(演出)モーツァルトの名作がもつカラフルな魅力を伝えたい 今年、開館5年目を迎えるフェニーたら自分が楽しいだろうな、という思いチェ堺。8月5日には、2019年のグランを常に持っていて、それをお客さまにドオープンの際に上演した子どものたどう見せるか、をパラレルに考えていめのオペラ「《まほうのふえ》~パミーるんです。物語が何を表現しているナ姫のたんじょうび~」を再演する。菅のかを観ている方に伝えるのが演出の尾友演出のこの作品は、元々18年にザ仕事だと思うので、お客さまと共有でルツブルク音楽祭で初演されたもののきるコンテクストを探すのが大事。あ日本語バージョン。前回は小編成アンえていうなら、子ども向けの時にはそサンブルでの上演だったが、今回は場れをより注意深く考えているかもしれ所を大ホールに移し、大阪交響楽団がません」ピットに入る。 例えば、《魔笛》の象徴的な場面であ 「物語はパミーナ姫がお誕生日の前日る第3幕の「火と水の試練」の場。今回菅尾は、これを「宝の地図を持って火とに不思議な夢を見る、という形をとっ水の中を冒険して宝箱を見つける」とています。タミーノは夢の中で出会ういう場面設定にした。「冒険」や「宝探お友だちで、パパゲーノはパミーナのし」という子どもに馴染みのある「コンお兄さん。テクストは変えているところもあって、例えば第2幕でパミーナがテクスト」に落とし込んだわけだ。こう歌う有名なアリアはタミーノが喋ってした「わかりやすいコンテクストに落とくれなくて悲しいという内容ですが、こし込む」というのは、子ども向けだけでこではみんながいなくなって寂しいとはなく「菅尾演出」自体の大きな特徴いう内容に変えてあります。モーツァであると思う。「それぞれの瞬間瞬間ルトが書いた音楽には手を加えず、物が生きていないと、子どもたちは退屈語の進行に合わせて順番を変えていしてしまう」という菅尾だが、もちろん、ます」ただ退屈させないだけでなく、《魔笛》 菅尾が子ども向けオペラを演出するという作品の持つ魅力を伝えたいとい時に、心がけていることを訊いてみた。う思いが根底にはある。 「子ども向けに特別なことをしている、という感覚はあまりないんですよね。作品に対して真摯に取り組む、という意味ではどんなプロダクションでも同じですから。僕は、こういうことができ躍を見せている。 今回のリサイタルでは、モンポウの「ショパンの主題による変奏曲」をはじめ、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、チャイコフスキーの小品や「眠れる森の美女」(プレトニョフによるピアノ独奏編曲版)といった、優雅さやドラマ性に満ちた楽曲が並ぶプログラムを披露。ヴァルヴァラの演奏の美質を存分に味わうことのできる内容となっている。7/25(火)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 https://stage.exhn.jp子どものためのオペラ《まほうのふえ》〜パミーナ姫のたんじょうび〜(日本語上演・字幕付)8/5(土)【昼の部】13:00 【夜の部】17:00 フェニーチェ堺 問 フェニーチェ堺(堺市文化振興財団)072-223-1000 https://www.fenice-sacay.jp取材・文:室田尚子文:長井進之介©Sergio Lopez Isla
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