eぶらあぼ 2023.7月号
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46Interview池辺晋一郎(作曲) × 板倉康明(東京シンフォニエッタ音楽監督)巨匠の80年間のイデアを俯瞰する祝賀コンサート 7月7日、板倉康明が音楽監督を務める東京シンフォニエッタが、今年傘寿を迎える池辺晋一郎を特集する。現代を切り取り表現する芸術家でありながら、クラシックの名曲を愛し、柔軟な活動を展開する池辺と板倉。両者の対談形式インタビューが実現し、池辺のトレードマークというべきダジャレも連発、気心知れたトークを繰り広げた。板倉「先生は活動がすごく多岐にわたっている。作曲、評論、執筆、指揮、講演、テレビ出演。これほどの多面性をもつのは、日本の作曲家ではおそらく先生だけかと」池辺「いろいろやりましたね。著書が30数冊で、こんなに音符以外の本を書くとは思っていなかった。言葉や文字が好きなのは子どもの頃から。詩も好き。なぜ好きかというと、答えは簡単、“し”がない作曲家だから(笑)」 本公演のプログラムも興味深い。池辺の小編成の作品を集め、しかも師匠・三善晃、同級生・福士則夫の作品も取り上げて、池辺という存在を俯瞰する。演目は池辺の「うたげ Ⅰ.Ⅱ」、「君は土と河の匂いがする」、「TANADA Ⅱ」。さらに福士の「花降る森」、三善の「詩鏡(うたかがみ)」が並ぶ。板倉「80歳記念だからサプライズにしたくて、全く先生にご相談せず、譜面を見て企画を考えました。僕が見た池辺晋一郎像をくっきりさせて、演奏団体としてお祝いをしたかった」池辺「初期から割と最近の曲まで、僕が考えているイデアが反映された曲をまとめてくれて、嬉しいですね」板倉「『うたげ Ⅰ』は1963年というと最初期の頃、大学1年のときの作品ですか」池辺「2年前に亡くなった(ジャーナリストの)立花隆が年上だけど、毎日のように遊んでいました。彼が東大生時代に書いた『うたげ』という詩に、十二音技法で曲を書いてみたのが『Ⅰ』です。その後、十二音はつまらなくてやめちゃったので、僕の唯一の十二音技法作品です。『Ⅱ』は86年、前作の補足として、表現主義的な曲を総括したいと思って作りました。 『君は土と…』は彩の国さいたま芸術劇場ができたときに諸井誠・初代館長の委嘱で書き、数年後に諸井さんに頼まれて第2楽章を追加しました。『TANADA Ⅱ(「Ⅰ」はオケ曲)』は、当時出演していた『N響アワー』で新潟にロケに行き、壮大な棚田をみて思いつきました。以前から『音は落ちるものである』というのが僕の考え。棚田を見ていたら、“そこに音がたまる。落ちるけれどまた次の段にたまる…”という風景が見えてきて、作曲につながりました」板倉「三善先生の『詩鏡』は初演以来の再演です。池辺作品を同級生と師匠の作品で囲むことで、新たな魅力を伝えたいと思います」 話は多岐にわたり、両者に共通する理念として「現代とは何かという問いは、過去を知らなければできない」との重い言葉も紡がれた。そして、今後の作曲計画について「交響曲は11曲書いて、オペラも11作。両方11になったからこれ東京シンフォニエッタ 第53回 定期演奏会 軌跡―池辺晋一郎80歳を祝して7/7(金)19:00 東京文化会館(小)問 AMATI 03-3560-3010 https://www.amati-tokyo.com左:池辺晋一郎 右:板倉康明でピリオドを打とうと。片方12にしちゃうとまた揃えたくなる」と笑う池辺に、クラリネット奏者でもある板倉が「クラリネット協奏曲は?」と水を向けた。池辺「クラリネット書いてもいいね。Esクラ、Aクラ、Bクラ、バスクラ持ち替えで」板倉「それをイタクラが吹く」池辺「ちょっとクラクラするね」板倉「早くしてくれないと私もクラクラしちゃう。バスクラは難しいけどバセットホルンまでなら大丈夫。記事にして既成事実化しましょう!(笑)」 1秒たりとも空かない当意即妙の掛け合いに笑いが止まらない(映像がないのが惜しまれるほど!)。昨年のインタビュー時に板倉が熱望していた「打ち上げ」も、この公演後から晴れて解禁とのこと。七夕の夜は晴れやかな記念演奏会になりそうだ。取材・文:林 昌英

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