CDSACDCDCD126近藤譲 室内楽作品選集「昼と夜」/佐藤紀雄&アンサンブル・ノマド吟遊詩人の調べ/上野芽実ピアノ作品にみる「山田耕筰ルネサンス」/佐野隆哉近藤譲の創作のエッセンスと全体像を明示する5作を集めた。3台のマリンバや15の弦楽器といった同質楽器群の楽曲には、音の重なり合いやリズムの変化を淡々と描き出していく方法論がよりピュアに現れており、多彩な楽器のアンサンブル曲ではそこに音色が変数として加わってにぎやかだ。どの曲にも音に溺れず、音を遊ぶという近藤の姿勢は明確に刻印されている。セリエリズムのような理屈優先の厳格さとは異なる、音に対するこのユニークな距離感が、初期から現在までほとんど変わっていないことに改めて驚かされた。アンサンブル・ノマドをはじめ近藤作品を熟知したメンバーの演奏も秀逸。(江藤光紀)滝千春は何と感性豊かなヴァイオリン弾きだろう。プロコフィエフのシニカルで変化に富んだ楽想の魅力を、新鮮な音で伝えてくれる。ソナタ第1番の第2楽章は、爆発的に狂暴なリズムをたたき込む。対比としての歌の第2主題は、特に再現部で美しく優しい。緩徐楽章の旋律にも不思議な屈折がある。終楽章も多様な要素に満ちていて、奇怪なものや不細工なものをそのまま突きつける。沼沢淑音のピアノとも息がぴったり。第2番のほうはシンプルに美しい。ヴァイオリンならではの表現にも長けている。「ピーターと狼」は、小鳥やアヒルなどの動物や情景が見えるようで楽しい。魅力的なアルバムだ。(横原千史)上野芽実にとって約5年ぶりのセカンドアルバムである本作は、充実の前作をも上回る内容か。上野の良さは、非の打ち所のない技巧に加えて、その楽曲の構成と内実を的確に抽出しうるセンス=卓越した音楽性にある。レゴンディ作品における旋律の歌わせ方の巧みさ、前半のアルペジオから後半のトレモロに至る流れの作り方の自然さと説得力、メルツの「吟遊詩人の調べ」といういわば性格小品でのキャラクターの表出力、そしてメルツ=シューベルト作品での名技と抒情性の融合など、さり気なく、しかし誠に高次元の音楽が展開されている。ギターの魅力ここに極まれり。(藤原 聡)佐野隆哉は磨きぬかれた技巧と多彩な音色を兼ね備え、精緻な構築性をもって楽曲の魅力を引き出すピアニスト。フランス人作曲家をはじめ多くのレパートリーを誇る彼だが、近年は山田耕筰のピアノ独奏曲の演奏と普及にも力を入れており、その成果ともいえるディスクが本盤である。様々なスタイルを取りいれながら独自の作風を確立した山田のピアノ作品は決して複雑ではないものの、そのぶん奏者の音色の魅力や歌心が求められる。佐野は豊かな響きをつくり、ニュアンスに富んだ音色で旋律を丁寧に紡ぎながら、楽曲の内容を深く掘り下げている。山田耕筰のピアノ作品の“決定盤”といえる内容だ。(長井進之介)滝千春(ヴァイオリン)沼沢淑音(ピアノ)妙音舎MYCL-00027 ¥3520(税込)フォレストヒルレコーズFHCD-22330 ¥2750(税込)近藤譲:視覚リズム法、ラスターは彼女に帽子を渡し そして彼とベンは裏庭を横切っていった、クイックステップと緩やかな終結、変奏曲(三脚巴)、合歓井上郷子 石川征太郎(以上指揮)近藤譲70歳記念演奏会アンサンブル佐藤紀雄(指揮) アンサンブル・ノマド収録:2017年10月、東京オペラシティ リサイタルホール 他(ライブ)コジマ録音ALCD-135 ¥3300(税込)プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番、同第2番、ピーターと狼(ヴァイオリンとピアノ版)(根本雄伯編)レゴンディ:ノクターン(夢想)/メルツ:「吟遊詩人の調べ」より〈無言歌〉〈スケルツォ〉〈ロマンス〉〈愛の歌〉〈妖精の踊り〉〈カプリス〉〈マルヴィーナへ〉〈夕べの歌〉〈タランテラ〉/ギターのための6つのシューベルト歌曲(メルツ編)上野芽実(ギター)山田耕筰:主題と変奏、若いパンとニンフ 五つのポエム、夜の歌1、夜の歌2、スクリャービンに捧ぐる曲、日本風の影絵、ピアノのための「からたちの花」、日本組曲 他佐野隆哉(ピアノ)Studio N.A.T NAT20484(4枚組) ¥5280(税込)Prokofiev Story/滝千春
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