eぶらあぼ 2023.7月号
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SACDCDCDCD124ハイドン:交響曲集 Vol.20/飯森範親&日本センチュリー響ふるさと 唱歌・童謡名曲選/小川明子&山田啓明リザ・リム:受胎告知の三連祭壇画/クリスティアン・マチェラル&WDR響&エミリー・ヒンドリックス飯森範親と日本センチュリー響のハイドン全集第20弾。交響曲第74番は、48歳のハイドンの充実ぶりが聴ける。冒頭ソナタ楽章は、展開部が充実している。とりわけ後半の豊かな動機労作からの転調楽句は、次第に別世界に連れていかれるかのよう。飯森は原則的に反復をすべてやるので、聴いていて細部を確認しやすい。終楽章、第1主題後半のトゥッティでの、生命力溢れる躍動ぶりが実に爽快だ。第56番はトランペットとティンパニが加わって華やかで祝祭的となる。終楽章の昂揚は狂暴でさえある。第40番のフーガ終曲は、形式にとらわれず、対位法を自由自在に展開して、変化に富んだ構成が楽しめる。(横原千史)作曲家の作品集に留まらず、様々な切り口で日本歌曲アルバムをリリースしてきたアルトの小川明子による10タイトル目のCD。明治のお雇い外国人が手掛けたオルガン・ピアノ譜など、オリジナル伴奏によって歌われる唱歌たちは、単なるノスタルジーの対象や子ども向けといった感傷を超えた芸術的センスに溢れている。幼い頃より意味もわからず口ずさんできた歌詞に、漢字で改めて向きあうという意味でブックレットの意義も大きい。ライナーノーツに記載された、讃美歌〈いつくしみふかき〉に大桑いよ子による歌詞がつけられた〈梅〉にまつわるエピソードも興味深い。(東端哲也)ピアニストとして地道な演奏活動を続け、初の一般販売のアルバムを制作した安藤久仁子。彼女の奏でる「ゴルトベルク変奏曲」は、語るようなアリアですぐに引き込まれる。各変奏から愛らしさ(第2変奏)、舞曲的な様相(第7変奏)、弦楽合奏のような豊かさ(第15変奏)、雅びやかに整理された重音の妙(第28変奏)、穏やかな説得力(第30変奏)等を鮮やかに引き出す。後半はリピートを省略することで流れよくまとめた。音楽的な句読点を絶妙な間合いで付け、強弱の丁寧なコントラストも素晴らしく、晴朗かつ誠実で充実した音楽だ。程よくホール残響を生かした録音も気持ちがいい。(飯田有抄)中国人の両親の下、オーストラリアに生まれたリザ・リムが、トランスカルチャーな出自を反映するかのように、東西の3人の女性―古代ギリシャの詩人サッポー、聖母マリア、イスラム教の開祖ムハンマドの娘ファーティマをテーマに、全三楽章の大管弦楽曲を書いた。オーケストラは荒々しく吠えもするが、三和音やペダル音、倍音群が、まるで地上から天に向かって立ち上る神々しく揺るぎない光のように楽曲を支配、終楽章では女声が聖なるイメージを歌いだす。それは戦いを乗り越える愛のメッセージだ。話題の指揮者マチェラルも、躍動感あふれる演奏で作品の魅力をダイナミックに伝える。(江藤光紀)J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲安藤久仁子(ピアノ)ハイドン:交響曲第56番、同第40番、同第74番飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団作曲者不詳:あふげば尊し、ふじの山、我は海の子、茶摘、鯉のぼり、海、冬景色/Ch.コンバース:梅/岡野貞一:紅葉、春の小川、朧月夜、故郷/本居長世:十五夜お月さん、赤い靴 他小川明子(アルト)山田啓明(ピアノ)リザ・リム:受胎告知の三連祭壇画クリスティアン・マチェラル(指揮)WDR交響楽団エミリー・ヒンドリックス(ソプラノ)KAIROS/東京エムプラスP0022003 KAI ¥3143(税込)収録:2020年10月、ザ・シンフォニーホール 他(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00813 ¥3850(税込)ナミ・レコードWWCC-7983 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-9253 ¥3300(税込)J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲/安藤久仁子

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