eぶらあぼ 2023.5月号
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第750回 東京定期演奏会〈春季〉 5/12 (金)19:00、5/13(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp6/10(土)、6/25(日)、7/9(日)、9/24(日)、10/9(月・祝)、10/28(土)、11/19(日)、12/3(日) 各日14:00 大阪/箕面市立西南生涯学習センター ホール問 箕面市立西南生涯学習センター072-723-5222 https://minoh-bunka.com67身近なホールのクラシック 箕面おんがく批評塾新進気鋭の評論家と音楽について「考え、語り合う」 箕面市立メイプルホールの音楽ラインナップ「身近なホールのクラシック」は国内外の注目アーティストによるバラエティ豊かなプログラムで構成されるが、コンサートと併せて、聴衆の好奇心を刺激するような生涯学習講座を提案していることも大きな特徴である。 2023年度に開講される「箕面おんがく批評塾」は、そうしたメイプルホールの講座のなかでも、とりわけ意欲的でオリジナリティに溢れるものだ。塾長を務める布施砂丘彦は日本のクラシック音楽界でもっとも若い音楽評論家のひとりだが、20代にしてクラシック音楽専門誌や全国紙の批評に名を連ね、その鋭い批評眼は高く評価されている。コントラバス奏者でもある布施は、音楽団体「ミヒャエル・ハイドン・プロジェクト」や音楽祭「箱根おんがくの森」といった斬新な企画の主宰者としても知られる。 この講座は「批評塾」と銘打ってはいるが、評論家の養成を目的としているわけではない。布施が目指しているのは「音楽とは何か」を徹底的に考え、語り合う場を作り出すことである。全8回の講座では、布施によるレクチャーだけでなく、箕面の自然のなかで作品を「つくる」フィールドワークも行われる。参加するのに楽譜が読めたり、楽器が演奏できたりする必要もない。この講座の根底には「音楽は聴き手のなかでかたちづくられるものであり、音楽の作り手は常に聴衆である」という布施の考えがあり、参加者に求められているのは音楽に真摯に耳を傾ける姿勢だけだ。若き音楽評論家とともに、音楽を聴くことの意味をじっくりと探究してみるのはいかがだろう。カーチュン・ウォン ©Angie Kremerり上げているカーチュンのリード、難関ミュンヘン国際音楽コンクールを制覇した佐藤晴真のソロというフレッシュな顔ぶれにも期待大。 ヤナーチェクはチェコ・モラヴィア地方の民族音楽にインスピレーションを得て個性を確立したが、晩年の「シンフォニエッタ」にはそのエッセンスが凝佐藤晴真 ©Tomoko Hidaki縮されている。総計12本のトランペットが登場する壮麗なファンファーレも聴きものだ。 本場から離れた、いわば周縁にあたる地域では、外部から輸入されたクラシックがそれぞれの地域文化と混交し、独自性が開花する。その醍醐味をたっぷりと味わわせてくれるに違いない。文:江藤光紀文:八木宏之布施砂丘彦カーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団次期首席指揮者の個性が光るアグレッシブなプログラム 5月の日本フィル定期は次期首席のカーチュン・ウォンが登場。シンガポールという多文化都市国家で育った指揮者らしいプログラムを聴かせる。 まずはミャスコフスキーの交響曲第21番。交響曲が時代遅れのジャンルとみなされていた20世紀のヨーロッパとは異なり、ソヴィエトでは社会主義リアリズムの名の下に労働者のための分かりやすい交響曲が積極的に作曲された。15曲を残したショスタコーヴィチが有名だが、それを遥かにしのぐ27曲を作曲したのがミャスコフスキーだ。第21番は単一楽章。15分ほどの作品で、後期ロマン派を思わせる分厚く垂れこめた気分が支配する。 芥川也寸志もヨーロッパ的なものから離れ、日本の民族性に向かい、社会主義リアリズムにもシンパシーを示した作曲家。同一音型の反復を原理にした「チェロとオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート」にもその個性が生きる。邦人作品を積極的に取

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