eぶらあぼ 2023.5月号
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「読み始めると止まらなくなるので、移動中だけと決めてます。中学の頃はその切り替えができず、本の続きが気になりすぎて練習にならなかったり(笑)」 まだ20歳。演奏と同じ、自然で天真爛漫な話しぶりが好感。将来の大器を確信させる音楽家の出現はいつもうれしい。5/12(金)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール5/14(日)14:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511  ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200(5/12のみ)https://www.kawasaki-sym-hall.jp/elektra/ その友人たちの「妃奈なら大丈夫だと思う」というひと言が、他の誰の言葉よりも背中を押してくれた。そして最高の結果に。 リサイタルの曲目は、モーツァルト「ソナタ第21番」、R.シュトラウス「ソナタ」、バッハ「シャコンヌ」、マスネ「タイスの瞑想曲」、ヴィエニアフスキ「ファウスト幻想曲」。 「好きな曲ばかり。重めの曲と明るい曲の対照を考えました。でも感情の振幅が大きいプログラムを弾くのは大変。私は感情移入して弾くタイプなので、シャコンヌを弾くなら、もうシャコンヌだけでいいっていう感じなんです」 コンクール覇者として、1年間に5大陸20ヵ国を巡る約60公演のツアーの真っ最中。 「教室に1時間半座っていなければならない学校の授業が苦手なので、練習と本番だけの毎日は気が楽です(笑)。お散歩して、その国の人たちに会えるのも面白くて」 読書が大好き。ミステリー、ファンタジー、恋愛小説、なんでも読む。前田妃奈 ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクール優勝記念リサイタル7/27 (木) 19:00 紀尾井ホール問 AMATI 03-3560-3010 https://www.amati-tokyo.com他公演 7/28(金) 大阪/住友生命いずみホール     (ABCチケットインフォメーション 06-6453-6000)60Interview前田妃奈(ヴァイオリン)コンクールを制した20歳の大器が世界ツアーを進行中 昨年10月にポーランド・ポズナンで開催されたヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクールで第1位に輝いた前田妃奈。日本人の優勝は1981年の漆原啓子以来という快挙だ。7月、東京と大阪で記念リサイタルを開く。 コンクールの公式動画。演奏中のこぼれんばかりの笑顔が印象的だ。 「あの舞台に立ててうれしくないはずはありませんし、私はいつもコンクールとか関係なく、そこで楽しんで弾ければいいと思っています。ただ今回は今までになく緊張しました。そろそろ真剣に今後のキャリアを考えていかなければいけない年齢なので、無駄にしたくはない。せっかくならいい演奏をして、という気持ちがありました」 とはいえ、じつはコンクールがあまり好きではないのだそう。出場を決めたのは締め切り直前だった。しかもきっかけはかなり偶然。 「寮の練習室から、たまたま誰かがヴィエニアフスキの協奏曲第2番を弾いているのが聴こえてきたんです。大好きな曲だけど、もう弾く機会はなさそうだなあ…。ん? ヴィエニアフスキ・コンクールの募集があったな!と思い出し、気がついたら部屋に戻って友だちに、『私、受けるわ! 1位になって帰ってくるわ!』と宣言していました(笑)」ジョナサン・ノット ©K.Miuraクリスティーン・ガーキー ©Arielle Doneson観点から特別な時間が約束される舞台、体験しない手はない。取材・文:宮本 明文:林 昌英©T.TairadateR.シュトラウス 歌劇《エレクトラ》(演奏会形式)待望の《エレクトラ》、最高の布陣、圧巻の演奏で!要求される《エレクトラ》は、ますます 《エレクトラ》が18年ぶりに実演で聴ノットの方向性に合いそうで、期待がける! R.シュトラウスの《エレクトラ》は、前高まるのを抑えられない。作《サロメ》と同様、演奏時間約100分、 歌手陣も世界的水準。昨年はアス強烈な音楽体験のできる傑作オペラでミク・グリゴリアンという誇張抜きで史ある。度々上演される《サロメ》に対し、上最高のサロメ歌いの歴史的名唱が《エレクトラ》は2005年以来なぜか日あったが、今年も贅沢なことにやはり本で上演機会がなく、昨年の上演予定世界的エレクトラ歌いのクリスティー(読響)は残念ながら中止に。それがン・ガーキーが登場し、他の主要キャスこの5月、ついに実現することになった。トにもトップ歌手が集まる。あらゆる その公演はジョナサン・ノット指揮、東京交響楽団による演奏会形式。昨年の彼らの《サロメ》はオーケストラ芸術の理想形と称えたい圧倒的な名演だったが、さらに大編成で強靭な音が

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