eぶらあぼ 2023.5月号
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Hansjörg Schellenberger/指揮 ドイツの首都からベルリン交響楽団が来日、フジコ・ヘミング(ピアノ)と共演する。指揮は同楽団の首席指揮者で、ベルリン・フィルの首席オーボエ奏者を長く務めたハンスイェルク・シェレンベルガー。岡山フィルの首席指揮者に就いて10年(現名誉指揮者)、日本でもすっかりお馴染みの名演奏家だ。6月15日、東京芸術劇場 コンサートホールで、ヘミングはモーツァルトの第21番、ベートーヴェンの第5番「皇帝」、ショパンの第1番と3つのピアノ協奏曲の第2楽章(緩徐楽章)を連ね、十八番のリスト「ラ・カンパネラ」も弾く。交響曲のメインは「運命」の愛称で知られる名曲中の名曲、ベートーヴェンの第5番。指揮者の力量を問う試金石でもある。来日前のシェレンベルガーにメール・インタビューを試みた。―ベルリン交響楽団はどのようなオーケストラですか? ベルリンの街の中での位置付けは? 「ベルリン交響楽団はフリー(自主運営という意味)のオーケストラで、ベルリン市と固定の契約はありません。月給はなく、開催した演奏会の報酬で運営しています。市民に寄り添った親しみやすい存在であり、クラシックの名曲を文学の要素も交えながら、ベルリンの街に届けてきました。年に6回、『ファミリーコンサート』という名前の定期演奏会もベルリン・フィルハーモニー・ザールで行っています」―今回のように名曲だけを集めたプログラムの場合、メインの交響曲を何にするかは逆に難しい課題です。ベートーヴェンの第5番を選んだ理由をお聞かせください。 「プログラムにベートーヴェンの第5番を入れたのは、素晴らしい作品である上、日本でも大人気の作品だからです。さらに、日本ツアーの主催者からのリクエストでもありました」―シェレンベルガーさんが指揮に進出されてから、かなりの時間が経ちました。オーボエ奏者がメインだった時代と比べ、どのような発見がありましたか? 「私は2001年にベルリン・フィルを辞めてからもソリストとして、あるいは指揮者の道を極めるためにも絶えず、オーボエの演奏を続けてきました。指揮者としてオーケストラのために書かれた名曲の数々に取り組むなか、オーボエの1番を吹いていた時代には得られなかった、たくさんの発見を経験してきました。指揮者の立場で作品全体のコンセプトに向き合う時、作品をより深いところまで見通せます。そうすることで、より集約した(intensiv=濃密で深い)ものをお届けできるのです」―協奏曲の緩徐楽章だけを3曲並べる試みは案外、面白いと思うのですが、シェレンベルガーさんはどうお感じになりますか? 「3つの異なる協奏曲で緩徐楽章のみを演奏するのはヘミングさんたっての願いであり、私は喜んで、その願いを叶えようと思います」―フジコ・ヘミングさんについて、コメントをいただけますか? 「私はまだ、ヘミングさんとお会いしていませんが、お話はたくさん聞いています。共演がとても楽しみです」ベルリン交響楽団 with フジコ・ヘミング6/15(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール 他公演6/23(金) 岡山シンフォニーホール6/30(金) 埼玉/サンシティ越谷市民ホール ★7/2(日) 静岡/富士市文化会館 ロゼシアター ★(★=マリオ・コシック指揮)■ サンライズプロモーション東京0570-00-3337https://sunrisetokyo.com※ベルリン交響楽団のツアーの詳細は以下のウェブサイトでご確認ください。 https://tempoprimo.co.jpInterview28レジェンドピアニストを迎えて披露する名曲プログラム取材・文:池田卓夫ハンスイェルク・シェレンベルガー

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