5/23(火)19:00、5/27(土)18:00 サントリーホール■ ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212https://www.japanarts.co.jp26 ドイツが誇る大ソプラノ、ディアナ・ダムラウの歌声は、役柄のパッションで様々に色を変え、ときには、触ると火傷しそうなまでに「白熱する」。「有難う。でも、私は満身創痍よ!フフフ」と彼女は笑った。2011年の初夏、《ランメルモールのルチア》に出演すべく、ダムラウは初めて日本を訪れたが、リハーサルから全力投球で背中一面に湿布薬なのと語り、「ほらね!」と見せてもくれさえした。 「歌うのも、キャラクターを探るのも大好き。いろんな言語で歌いたいの。同じ感情でも、言葉で表現法が変わるでしょう。日本の歌も勉強しているのよ」と語ったダムラウ。小学唱歌の〈春よ来い〉をさらっと口にした折、木漏れ日のような柔らかさが伝わってきた。 来る5月、そのダムラウが、夫君のバス、ニコラ・テステと6年ぶりの来日を果たす。前回、2017年のコンサートでは、超絶技巧を駆使した〈影の歌〉(マイヤーベーアの《ディノーラ》)で客席が揺れる程の喝采を巻き起こしたが、それと共に記憶に残ったのは、聴衆が一斉に深い溜息を洩らしたひとこま。それが、テステが歌う《ドン・カルロ》の国王のアリアであった。 テステはパリ生まれ。なので、勿論、オリジナルのフランス語で披露したが、声を押さず、言葉を噛み締め、品格豊かに歌い上げるその姿は、ファン層に「まったく新しい感動」を呼び起こしたよう。拍手が徐々に熱くなり、答礼でさらに熱気が増したさまは今も忘れられずにいる。 それだけに、5月のコンサートでも、このアリアが改めて選曲されたことを嬉しく思う。作曲家ヴェルディも、テステの突き詰めた解釈を喜んでいることだろう。 ちなみに、今回のテーマは「Kings and Queens ディアナ・ダムラウ&ニコラ・テステ ©Chris Singerof Opera」とのこと。気丈な女王(ロッシーニ《セミラーミデ》)や悲劇の王妃(ドニゼッティ《アンナ・ボレーナ》)、人々を束ねる巫女(ベッリーニ《ノルマ》)の心模様をダムラウが気高く歌い上げ、テステは先述の国王や、想いを実らせた老公爵(チャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》)の静かな情熱をじっくりと表現するに違いない。なお、一つ興味深いのは、ダムラウが新境地として、ハジエフ作曲の《マリア・デシスラヴァ》で実在の王女が神に訴える〈祈りのアリア〉を選んだこと。「今度はブルガリア語なんだ!」と驚かされたが、この珍しいアリアも含めて、当日は、名歌手二人が最上のコンディションで歌を届けられるようにと、心から願っている。文:岸 純信(オペラ研究家)世界最高峰のソプラノ&魅惑のバス待望の来日ディアナ・ダムラウ(ソプラノ) & ニコラ・テステ(バス)オペラ・アリア・コンサート
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