eぶらあぼ 2023.5月号
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124ピーターとおおかみ/アンサンブル・ミクストクープラン:クラヴサン曲全集 3/中野振一郎ファンタジー/田中香織ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》《火の鳥》/クラウス・マケラ&パリ管アンサンブル・ミクストは、結成20年の木管五重奏団で、個々の技巧の練度も合奏精度も極めて高い。プロコフィエフの「ピーターとおおかみ」に要求されるソリスティックな難しいパッセージも楽々こなし、聴いていて実に楽しい。各楽器のソロに割り振られた動物たちとピーターとの交流や、動物同士の駆け引きや喧嘩など、ユーモラスでウィットに富んでいるところが、いかにもプロコフィエフらしい。それを木管五重奏の多彩な音色を駆使しながら、見事な演奏で作り上げた。バレエ音楽「ロメオとジュリエット」抜粋も木管五重奏を生かした編曲で、名作の魅力を存分に味わわせてくれる。(横原千史)軽妙な諧謔の精神を的確にとらえつつ、決して端正さや品格を失わぬ秀演。まさに、この名手の面目躍如といったところか。中野振一郎が続けている、仏バロックの大家フランソワ・クープランのクラヴサン(チェンバロ)作品全集録音の第3弾。今回は、「クラヴサン曲集」全4巻から4つのオルドル(組曲)と、「クラヴサン奏法」から前奏曲第2番を取り上げた。典雅な調べの裏に隠された恋の駆け引き。音の肖像画のごとく活写された人物たち…オルドルごとの色彩の違いも緻密に描き出しつつ、底鳴りするブランシェ・モデルのクラヴサンから、瑞々しい音楽が紡ぎ出される。(笹田和人)スイス・バーゼルで研鑽を積み欧州での活動を経て、国内を拠点に室内楽の分野でも活躍中のクラリネット奏者・田中香織のソロ・デビュー盤。管楽器奏者にとって主軸となる近代~現代フランス音楽の華麗なる「ファンタジー」が盛り沢山。19世紀後半生まれの作曲家たちの、不思議とフランス映画のワンシーンを思わせるような作品群の中で、冒頭のピアノからドイツ・ロマン派の流れを感じさせるデンマークの雄・ニールセンの若書きがアクセントになっている。どこかエレクトリックな響きすら感じるヴィトマンの無伴奏曲や名奏者でもあったセムラー=コルリーの弾むような2曲も素敵。(東端哲也)今年27歳のマケラと、彼が2021年から音楽監督を務めるパリ管による初のCD。これはこの天才指揮者への圧倒的な賞賛にたがわぬ名演だ。「春の祭典」は、最初の部分から木管の雄弁さ、豊かな色彩、表情の細やかさに耳を奪われる。その後も音色美と鮮烈なリズムが全開。ギア・チェンジも巧みで、快速調で畳み込む部分などまさに胸がすくといった感がある。「火の鳥」も、全曲版の妙味を実感させる精緻で密度の濃い演奏。全体に野生的ではなくスマートな表現だが、細部まで息づいた、生気と躍動感に富んだ両曲は、当コンビの今後に大いなる期待を抱かせる。(柴田克彦)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9050,51(2枚組) ¥3300(税込)ユニバーサル ミュージックUCCD-45023 ¥3080(税込)プロコフィエフ(J.リンケルマン、アンサンブル・ミクスト編):組曲「ロメオとジュリエット」より〈民衆の踊り〉〈情景〉〈マドリガル〉〈モンタギュー家とキャプレット家〉、「ピーターとおおかみ」アンサンブル・ミクスト【梶川真歩(フルート) 本多啓佑(オーボエ) 尾上昌弘(クラリネット) 嵯峨郁恵(ホルン) 中田小弥香(ファゴット)】ジェーニャ(語り)ナミ・レコードWWCC-7980 ¥2750(税込)クープラン:クラヴサン奏法 前奏曲第2番、クラヴサン曲集第1巻 第2オルドル、同第2巻 第12オルドル、同第3巻 第14オルドル、同第4巻 第23オルドル中野振一郎 築山茉以(以上チェンバロ)デルマ:イタリア風幻想曲/ゴーベール:ファンタジー/マズリエ:ファンタジー・バレエ/ニールセン:ファンタジー/マルティ:ファンタジー第1番/ヴィトマン:ファンタジー/ルヴェル:ファンタジー/セムラー=コルリー:ファンタジーとジーグ形式のダンス田中香織(クラリネット)仲地朋子(ピアノ)妙音舎MYCL-00035 ¥3300(税込)ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」(1947年版)、同「火の鳥」(1910年版)クラウス・マケラ(指揮)パリ管弦楽団CDCDCDCD

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