eぶらあぼ 2023.4月号
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第749回 東京定期演奏会〈春季〉 4/28(金)19:00、4/29(土)14:00 サントリーホール第387回 横浜定期演奏会〈春季〉5/20(土)17:00 横浜みなとみらいホール第400回 名曲コンサート5/21(日)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp7/18(火)19:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jpプラチナ・シリーズ第1回ベルリン・フィルハーモニック・ウィンズ 〜世界最高峰オーケストラの精鋭たち〜“モクゴ”、ここに極まれり 木管五重奏は室内楽であると同時に、5本の異なる管楽器によるソリストの競演という性格も持つ。それがベルリン・フィルで席を並べてきた顔ぶれとなれば、極上の音楽体験は保証済みというもの。 今回のメンバーで最年長はアンドレアス・ブラウ(在籍は1969~2015年)。カラヤン時代の黄金期に入団を果たした頃から、演奏スタイルの国際化の中でドイツのフルートが歩むべき道を、彼は既に極めていた。アバドやラトルの時代を迎えても、その雄弁な笛が合奏を牽引していた姿は記憶に新しい。かたやイギリス出身のジョナサン・ケリー(同2003年~)もまた、カラヤン指揮のレコードに聴くオーボエの音に魅了された学生時代から“ジャーマン・スタイル”の未来像を追い求めてきた吹き手だ。 こうしたプレイヤーがトップの座をしめる木管セクションでも、現役最古参父親を殺した相手に復讐するとか、そうとは知らずに関係を持ってしまった妹が入水するとか、最後は主人公も自刃する陰惨な物語。若き作曲家はこの物語に触発されて、荒ぶる音楽を書いている。すっきり爽やかな北欧音楽というイメージとは真逆の、怨念や哀惜が渦巻いているのだ。 兄妹が恋愛関係に陥るこの話、インキネンのもう一つの看板、ワーグナーの「リング」とも似ているが、歌唱はヨハンナ・ルサネンとヴィッレ・ルサネンという実のフィンランド人姉弟が担う。インキネンは世界各地のオケを振って曲の普及に努めているが、やはりこのの首席奏者がファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルト(同1985年~)。日本でも人気のサラ・ウィリス(同2001年~)は、2番・4番奏者としてホルン・セクションを盤石の安定感で支え、近年はソロ活動も盛んだ。クラリネットのアレクサンダー・バーダー(同2006年~)は我が国での知名度こそ低いかもしれないが、彼の参加した「兵士の物語」のCDを聴いて「ベルリン・フィルは2番奏者までこの巧さなのか!?」と、半ば失礼ながら驚いた経験が筆者にはある。 ドイツが世界に誇るオーケストラの縮図にして、歴史の語り部ともいえるアンサンブル。プログラムはベートーヴェンの弦楽五重奏曲の編曲版やホルスト「木星」など変化に富み、盛りだくさん。来日を楽しみに待とう。ピエタリ・インキネン ©山口 敦曲は、フィンランドの血を引く渡邉曉雄が礎を築いた日本フィルとの演奏で聴きたい。 ©Pacific Music Festival文:江藤光紀文:木幡一誠52ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 祖国の大曲と「第九」で任期の集大成を見せる 瀟洒な出で立ちと音作りで人気を博してきたインキネンが、首席指揮者としての最後のコンサートでは得意のシベリウス、またツィクルスで取り組んできたベートーヴェンの大作を携え、筋の通ったところを聴かせてくれる。日本ではその力量に触れる機会がないが、インキネンはオペラの評価も滅法高い。これらの大作で片鱗も味わえそうだ。 まずはベートーヴェン・イヤーに企画していた交響曲連続演奏会。コロナでゴールが遠のいたが、任期を延長してまで取り組んだこのプロジェクトもようやく「第九」で幕を閉じる。歌手もワールドワイドに活躍するソプラノの森谷真理やバリトンの大西宇宙をはじめ、本邦最高のメンバーが揃った。 もう一つのコンサートは、看板でもあるシベリウスから初期の大作「クレルヴォ交響曲」。フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』を題材にした本作は、

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