Interviewワルター・アウアー(フルート)ウィーン・フィル首席奏者が極上の音色で彩るお気に入りのプログラム 2003年よりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ならびにウィーン国立歌劇場管弦楽団の首席フルート奏者を務めるワルター・アウアー。世界最高峰のフルートの音色を、浜離宮朝日ホールの贅沢な空間で堪能できるリサイタルが5月17日に開催される。 ブリッチャルディ「ローエングリン・ファンタジー」からはじまり、プーランク「フルート・ソナタ」、デュティユー「ソナチネ」、ボルヌ「カルメン幻想曲」、一柳慧「忘れえぬ記憶の中に」、そして最後はフランクのヴァイオリン・ソナタ イ長調のフルート&ピアノ編曲版という、匂い立つような美しいプログラム。選曲の意図を尋ねると、このような答えが返ってきた。 「フルートという楽器特有の音色と可能性のすべてを皆さんにご紹介したいといつも考えています。新しいプログラムを完成させるには、アイディアが出るところから演奏まで多くの時間がかかりますが、作品をアナリーゼ(分析)し、生まれた音楽に対して聴衆の皆さんがどのような反応をするか想像しながらプログラムを組んでいます。ある意味で、プログラムを作ることは作曲することに似ていると思います」 今回はフランスの作品が多いが、その演奏からはアウアーならではの「ウィーンらしさ」をたっぷり感じることもできるだろう。 「ウィーン・フィルがほかの楽団と一線を画しているのは、つねに世界最高の歌手と一緒にオペラを演奏しているところです。歌手たちと演奏するには、耳を傾けて素早く反応することが重要で、日々音楽作りについてマスタークラスを受けているように感じています。オペラを演奏することで、私たちのオーケストラ・サウンドはシルキーなタッチとフルボディの重厚さを兼ね備えたものになります。ブラームス、ベートーヴェン、モーツァルトなど、私たちの継承する豊かな伝統から生まれた音楽やサウンドを、聴衆の皆さんは喜んでくださるのではないでしょうか」 一方で、その音色を生み出している楽器が日本製であることも興味深い。 「2005年にはじめて三響フルートに出会って、その音色が心に響きました。以来愛用していますが、多彩な音色と幅広いダイナミクスを表現することができる三響フルートにとても満足しています」 世界を股にかける多忙な日々のなか頻繁に日本を訪れる親日家としても知られる。 「日本は第二の故郷のような場所。私が心から感謝しているのは、聴衆の皆さんが純粋に音楽に対する関心や、音楽を感じようとする意欲を持っていることです。そして、幸せなことに日本には多くの友人がいます。そこにいるワルター・アウアー フルートリサイタル5/17(水)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/新型コロナウイルスの影響で、公演やイベントが延期・中止になる場合があります。掲載している公演の最新情報は、それぞれの主催者のホームページなどでご確認ください。取材・文:原 典子だけでリラックスできて、あたたかな気持ちになります」 昨年10月に世を去った作曲家、一柳慧のフルート独奏曲「忘れえぬ記憶の中に」には、そんなアウアーの日本への気持ちが込められている。 「この作品はとても魅力的ですが、一方で、挑戦的な作品だとも思います。この作品が誕生するきっかけとなった1995年の阪神淡路大震災は、生命がいかに儚いものかを私たちに教えました。芸術は私たちに希望を与えます。この作品を演奏し、聴いていただくことで、失った愛する人を思い出すのに役立つことができればと願っています」 共演のピアニストはアウアーの日本での演奏活動には欠かせない存在となっている沢木良子。フランス、ウィーン、日本を結ぶ妙なる響きに身を浸したい。50
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