eぶらあぼ 2023.4月号
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49になり、5人で自分の学校の部員や友人に「高校生だけでコンサートをやらないか」と呼びかけた。「そんなの無理だよ」「できっこない」 否定され、背を向けられた。「失敗したら、高校生なのに責任はどう取るのか」 学校の先生にも不安視された。 だが、それ以上に「自分も参加したい」「何か協力させてほしい」という人が続々と現れた。 SNS経由で連絡をくれる人もいた。東海大学付属相模高校吹奏楽部の3年生で、将来はアナウンサーを目指している岡田悠哉も、SNSを見て「司会をさせてほしい」と申し出てくれた。「絶対良いコンサートにしてやる!」 拳太郎の心は熱く燃えた。一方、一星はいつも冷静で淡々と物事を進めてくれた。ふたりはこれ以上ない名コンビだった。 だが、コンサートは熱意だけでは開催できない。 メンバー集めは紆余曲折がありながら、奏者62人、スタッフ16人、合計78人もの参加が決まった。会場は当初予定していた小規模なホールからヨコスカ・ベイサイド・ポケットへと変更した。 当然、会場を使うには使用料がかかり、楽器を運搬するためにトラックを頼まなければならない。出場者からの参加費と、チケットがすべて売れた場合の売り上げを合計しても、経費の半分しかまかなえないことがわかった。拳太郎と一星は企業にプレゼンをしにいき、必死に協賛を集めた。 事前のリハーサル会場は、拳太郎が所属する横須賀総合高校を使わせてもらえることになった。そのために拳太郎は何度も校長に頭を下げにいった。吹奏楽部の顧問も協力を表明し、楽器も貸してもらえることになった。母校の南郷中学校と横浜市立保土ケ谷中学校も楽器を貸してくれた。 苦労しながらも、「企画・演奏・運営のすべてを高校生だけで行うコンサート」というパズルのピースは徐々に埋まっていった。 そして、最後のピースは北海道からやってきた。 2023年度の吹奏楽コンクール課題曲I《行進曲「煌めきの朝」》の作曲者・牧野圭吾は、札幌市在住で、拳太郎たちと同じ高校3年生。ダメ元で連絡してみたところ、来場して同曲の指揮をしてくれることになったのだ。これ以上にないゲストだ。 発案から約5カ月後の2023年2月23日。ついに『高校生による夢の吹奏楽コンサート #1mov.』が開催された。会場は満員。拳太郎は指揮台に立って11曲を指揮し、牧野圭吾が自作でタクトを振った。学校や部活動の枠を超え、79人の高校生たちがつくり上げた画期的なコンサートは、大きな共感と感動を呼んだ。コンサート当日の様子「無理だと思わずに頑張ってみれば、夢のようなことを実現できることもあるんだ」 拳太郎と一星はそう思った。ふたりの力だけではない。コロナ禍に苦しめられた高校生みんなの強い思いがあったからこそ実現できたことだった。 最後の曲《宝島》が響き渡る中、79の笑顔と青春がホールにまぶしく煌めいた。課題曲《行進曲「煌めきの朝」》作曲者の牧野圭吾さん♪♪♪拡大版はぶらあぼONLINEで!→♪♪♪5名の実行委員メンバー

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